ジャパニーズ エステティック デンティストリー2019
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Aiming at symmetry of gingival levelはじめに 患者の顎口腔の審美性に対する要求が高まり、前歯部のみならず臼歯部においても天然歯に近似した色調と光透過性をもつ補綴処置が求められるようになってきた。 それらの光透過性をより一層天然歯に近づけたものがオールセラミッククラウンである。欧米諸国では、口腔内からメタルをなくすという考え方が主流になってきており、1970年代にGrossman1らがキャスタブルセラミックスを開発して以来、数多くのオールセラミックシステムが開発され2-4、審美補綴領域は飛躍的に広がりつつある。 21世紀に入り、いままではアナログであった製作方法も、CAD/CAMの技術が進歩し、“白いメタル”と称されるジルコニアなどの高い強度を有するコア材料を、高度な適合精度で製作されるデジタル時代へと変遷しつつある5、6。これらは、接着技術に頼る必要のないほどの高い強度を兼ね備えたシステムで、3~4ユニット、さらにフルマウスのブリッジにも応用可能な強度を有している。ただ、ジルコニアフレームを用いたオールセラミッククラウンを装着しても、機能的な咬合調整に不備があれば築盛陶材での破折は免れない。ジルコニアのクラウンを用いれば破折はしないという考えは大きな誤りである。したがって、材料のもつ強度は別として、オールセラミッククラウンが破折を起こさないための具備条件として考えられることは、ポーセレンに均一な厚みを確保するための支台歯形成がなされていることに始まり、適合精度を左右するスムースなマージンライン、さらに生理的な咬合7を与え、接着操作を誤らなければ、ジルコニアほどの強度を有していなくとも、現在製品化されているオールセラミッククラウンの破折は起こらないと筆者の経験から断言できる。おのれの支台歯形成の不備を棚に上げて、破折したオールセラミッククラウンのシステムや歯科技工士を批判するのは本末転倒といえる。また、歯科技工士の製作技術も格段に向上し、美しい修復物が製作される時代から、天然歯のような歯が製作される時代になっている。優秀な歯科技工士が製作する自然な修復物であっても、歯周組織との調和、特に上顎前歯部においては、左右のgingival levelの対称性が大きく影響する。本稿では、さまざまなケースの上顎前歯部の審美補綴治療におけるgingival levelの対称性について言及したい。六人部慶彦むとべデンタルクリニック大阪市北区堂島2-3-7Gingival levelの対称性を目指して33THE JAPANESE JOURNAL OF ESTHETIC DENTISTRYISSUE 2019

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