ジャパニーズ エステティック デンティストリー2019
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Multiple tooth prosthetic case utilizing the potential of multi-layer gradation zirconia discsケースプレゼンテーション 患者は34歳男性歯科医師。他院からの紹介で、上顎右側のサイナスフロアエレベーションを含めたインプラント補綴を予定して来院した。初診時の状況をFig 1 to 3に示すが、全顎にわたってプロビジョナルレストレーションが装着された状態であった。上顎右側臼歯部へのインプラント埋入が主な目的であったが、下顎右側臼歯部の欠損スパンも長かったため、カウンセリングの上でこちらもインプラントによる補綴が選択された。同様に、これを機にすべて単冠での補綴にしたいと希望され、4部の欠損もインプラントで処置することとなった。その他、残存歯に対しても必要に応じた再補綴を施す、下顎6前歯以外を対象とした多数歯補綴が計画された。 初診時CT画像をFig 4に示す。Fig 3のデンタルエックス線写真でも確認された、上顎右側臼歯部の垂直的骨量不足が見て取れる。一方、4部の垂直的骨量は十分であった。さらに、下顎右側臼歯部の欠損に対してはブリッジという選択はじめに 当初はフレームワーク材料としてのみ活用されてきたジルコニアが、モノリシックレストレーション用材料として繁用されるようになって以来早くも5、6年ほどの年月が経過した。CAD/CAMによる歯冠形態のデザイン、そしてバーチャル咬合器などによる機能のシミュレーションをそのまま補綴装置に生かすためにはマニュアルによる陶材築盛を要しないモノリシックレストレーションが理想的であるが、その一方肢も考えられたが、近心側の支台歯が無髄歯であり、長期的な安定性を考慮するとやはりインプラントの適応と考えられた。筆者の臨床経験から述べると、支台歯に無髄歯を含む4ユニット以上のブリッジはいずれ再治療となる場合が多く、患者の条件が許すかぎりインプラントを選択したい。 上記で得られた情報を基に、補綴装置のデザインを開始した(Fig 5)。また、この期間に装着したプロビジョナルレストレーションをFig 6に示す。プロビジョナルレストレーションを装着した状態と、同じく撤去した状態でシリコーン印象材による印象採得・模型製作を行い、それをデスクトップスキャナーでスキャンした上で双方の画像をスーパーインポーズした。支台歯とのクリアランスを確認しながら、既存のプロビジョナルレストレーションの形態を修正、あるいは必要に応じてCADソフトウェア内のライブラリーにある歯冠形態を利用する。今回は基本的にすべてジルコニアモノリシックレストレーションとするが、6前歯は唇側を最大でで前歯部の審美性においては歯科医師と歯科技工士のコラボレーションによる陶材築盛に一日の長がある。 そこで本稿では、最新のグラデーションジルコニアディスク(JDSジルコニアディスクマルチレイヤー、日本歯科商社)を用いたモノリシックレストレーションの利点を最大限に活かしつつ、上顎前歯部にのみ最小限のカットバックを行って陶材築盛した症例を示すことで、現状での到達点を示したい。11THE JAPANESE JOURNAL OF ESTHETIC DENTISTRYISSUE 201911THE JAPANESE JOURNAL OF ESTHETIC DENTISTRYISSUE 2019

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