口腔外科 YEARBOOK一般臨床家、口腔外科医のための口腔外科ハンドマニュアル'18
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VISUAL SEMINAR : BASIC DENTAL AND ORAL SURGERY 歯を失った欠損部の機能回復として,口腔インプラント治療は非常に有効な方法である1,2.一方最近では,インプラント周囲組織の疾患,オッセオインテグレーションの喪失,インプラント体の破折などの問題も報告されている3〜5.治療が成功し,良好な予後を長期間維持するためには,患者の全身状態の把握,適切な検査・診断,確実な歯周基本治療・歯周外科治療・補綴治療などの包括的な知識と治療技術が求められ,とくに日本歯周病学会では適切な歯周治療後にインプラント治療を行うことを推奨している6(図1). 歯周炎や歯根破折,外傷などよる歯の喪失では歯槽突起を喪失することが多く,埋入部位の歯槽骨の不足とともに角化歯肉の喪失や口腔前庭の狭小を生じ,硬組織,軟組織のマネージメントが必要となる.本稿では,インプラント周囲軟組織のマネージメントの重要性や術式などについて述べる.歯周組織とインプラント周囲組織の特徴 天然歯における歯周組織とインプラント周囲組織を図に示す6(図2,表1).歯周組織とインプラント周囲組織の大きな違いは,歯根膜の存在と接合上皮の状態の違いにある7,8.インプラント周囲組織は結合組織性の付着がなく上皮性付着が天然歯と比べ脆いため,インプラントの長期安定にはインプラント周囲粘膜の安定が重要である9,10.つまり,予知性の高いインプラント周囲組織を獲得し維持するためには,インプラント周囲の軟組織を適切にマネージメントすることが必要となる.インプラント周囲疾患 インプラント周囲疾患はインプラント周囲粘膜炎およびインプラント周囲炎の2つの異なる病態に分類され11,12,粘膜炎はインプラント周囲軟組織の炎症反応,周囲炎は軟組織の炎症に加えて進行的なインプラント周囲の辺縁骨吸収を示すと定義されている13. インプラント周囲疾患と関連する局所的ならびに全身的なリスクファクターとして,口腔衛生状態,歯周治療の既往,角化粘膜(歯肉)の有無,糖尿井川貴博1,2/秋月達也3/和泉雄一21 株式会社東京放送ホールディングス診療所歯科 連絡先:〒107‐8006 東京都港区赤坂5‐3‐62 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野 連絡先:〒113‐8549 東京都文京区湯島1‐5‐453 東京医科歯科大学歯学部附属病院維持系診療科歯周病外来 連絡先:〒113‐8549 東京都文京区湯島1‐5‐45Takahiro Ikawa1, 2, Tatsuya Akizuki3, Yuichi Izumi21 TOKYO BROADCASTING SYSTEM HOLDINGS, INC. TBS Health Clinic address : 5-3-6 Akasaka, Minato-ku, Tokyo 107-80062 Department of Periodontology, Graduate School of Medical and Dental Sciences, Tokyo Medical and Dental University address : 1-5-45 Yushima, Bunkyo-ku, Tokyo 113-85493 Periodontics, Dental Hospital, Tokyo Medical and Dental University address : 1-5-45 Yushima, Bunkyo-ku, Tokyo 113-8549インプラント治療における軟組織のマネージメントSoft Tissue Management for the Implant TreatmentMovieスマホで動画が見られる!46,48頁(使い方:7頁参照)41Chapter1-1Section1ビギナー&ミドルのための必修 ベーシックテクニックChapter1 口腔外科ビジュアルセミナー

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