口腔外科 YEARBOOK一般臨床家、口腔外科医のための口腔外科ハンドマニュアル'18
1/6

Section1ビギナー&ミドルのための必修 ベーシックテクニックChapter1 口腔外科ビジュアルセミナーVISUAL SEMINAR : BASIC DENTAL AND ORAL SURGERY 埋伏歯の抜歯は口腔外科手術のなかでもっとも頻度が高く,口腔外科医が習得すべき基本的手術である.そのなかで下顎埋伏智歯は他部位の抜歯に比べて,神経損傷(下歯槽神経,舌神経),異常出血,歯根の舌側軟組織内迷入,気腫などの偶発症を生じやすく,安全に抜歯することが求められる.本稿ではこれらの偶発症のうち,神経損傷を回避するための抜歯手技を中心に詳述する.下歯槽神経・舌神経の損傷と回避のポイントⅠ 神経損傷は,完全に回復しないことがある,訴訟に発展しやすい,などの点からもっとも避けなければならない偶発症である. 下歯槽神経損傷については,画像検査により下顎智歯の歯根と下顎管の位置関係を事前に確認できるため,抜歯後に知覚鈍麻を生じるおそれがあることを患者に事前に十分に説明し,また術中は回避すべく十分な注意を払わなければならない. 一方,舌神経損傷は,神経の位置を画像で確認することができず,また完全断裂させた場合には患者は生涯にわたって味覚,舌の知覚を失うおそれがあり,頻度は低いものの下歯槽神経損傷よりもはるかに重大であり,絶対に避けなければはならない. 神経損傷を回避するポイントは,①解剖の熟知(神経の走行,下顎骨の形態など),②画像の正確な読影,③神経損傷の原因の理解,④神経損傷を起こしにくい抜歯手技,の4つである.ポイント①解剖の熟知1)神経の走行 下歯槽神経については,下顎管の走行を画像的に確認できることからとくに解説を要しないと思われる.一方,舌神経はその位置を確認できないため注意が必要である.統計的には図1 1,2のような位置を走行するとされている.歯槽頂に近い場合や舌側皮質骨に接して走行する症例もある(図2)ことから,歯冠分割時にバーで損傷しないように注意する必要がある.舌側皮質骨に接して走行しているというもっとも危険な状態を想定して,慎重に抜歯しなけ堀之内康文公立学校共済組合九州中央病院歯科口腔外科連絡先:〒815‐8588 福岡県福岡市南区塩原3‐23‐1Yasufumi HorinouchiDepartment of Oral and Maxillofacial Surgery, Kyushu Central Hospital of the Mutual Aid Association of Public School Teachersaddress : 3-23-1 Shiobara, Minami-ku, Fukuoka-shi, Fukuoka 815-8588下顎埋伏智歯抜歯時のトラブル回避法神経損傷回避を中心にPrevention of the Complications in Mandibular Third Molar ExtractionsMovieスマホで動画が見られる!32,33頁(使い方:7頁参照)28Chapter1-1

元のページ  ../index.html#1

このブックを見る