歯科医師・歯科衛生士のための滅菌・消毒・洗浄・バリアテクニック
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30「スポルディングの分類」による器具・装置の分類 器具・装置については,治療に準じて感染のリスクレベルで分類したスポルディングの分類をもとに対応すると処理しやすい.スポルディングの分類で器具は,「クリティカル」「セミクリティカル」「ノンクリティカル」に分類される(表2). クリティカルに適応する器具は加熱滅菌で処理,セミクリティカルに適応する器具は中水準から高水準の消毒薬で対応する(表2,3).「CDCガイドライン」(米国・疾病予防管理センター,2003年),「日本歯科医学会・一表3 消毒水準分類と主な消毒薬.高水準消毒薬と中水準消毒薬の差は,細菌の芽胞を不活化できるかどうかである.消毒薬は取り扱いの注意が必要なので,使用方法を熟知して使用することが必要.消毒の水準主な消毒薬高水準消毒芽胞が多数存在する場合を除き,すべての微生物(HBV,結核菌を含む)を死滅させるグルタールフタラール過酢酸中水準消毒芽胞以外の結核菌,細菌,多くのウイルス,真菌を殺滅する(HBVには効果弱)次亜塩素酸ナトリウムポピドンヨードクレゾール消毒用エタノール(アルコール)低水準消毒一般細菌に効果塩化ベンザルコニウムクロルヘキシジン*参考1 日本医科器械学会・監修,小林寛伊・編.改訂 医療現場の滅菌.東京:へるす出版,2013.*参考2 日本病院薬剤師会・編.消毒薬の使用指針 第3版.東京:薬事日報社,1999.【補足】■「殺菌」はどの菌をどの程度殺すのかの明らかな定義がない.「除菌」は細菌を取り除いて減弱することで,菌を殺すわけではない.そのため,消毒の分類としては用いず,この表の分類項目にも入っていない.■電解次亜塩素水は,消毒効果は強いが,物性が不安定なため,エビデンスもなく,位置づけされていない.表2 スポルディングの分類(一部改変).大まかには,外科的器具(つまり観血的処置)に使用する器具は,「クリティカル」として滅菌処理して準備する.そのほかの器具については,「セミクリティカル」対応とするが,クリティカル対応することは差し支えはない.分類必要な処置定義歯科関係の器具・装置危険(クリティカル)滅菌無菌の組織や血管に挿入されるもの(手術器具,針など)外科用器具(抜歯セットなど)インプラント手術器具リーマーなどのファイルスケーラータービンなどハンドピース切削用バー基本セット用インスツルメント(探針,エキスカなど)中程度に危険(セミクリティカル)高水準消毒(中水準消毒)粘膜または健常でない皮膚と接触するもの(内視鏡,喉頭鏡,気管内チューブなど)印象用トレー写真撮影用ミラー咬合紙ホルダー3Wayシリンジ先端危険でない(ノンクリティカル)洗浄または低水準消毒傷のない皮膚と接触するもの(リネン,食器,聴診器など)印象用ラバーボールセメントスパチュラパルスオキシメーターなど■「CDCガイドライン」(米国・疾病予防管理センター,2003年),「日本歯科医学会・一般歯科診療時の院内感染対策に係る指針」(2014年)では,ハンドピースは高水準消毒ではなく,患者ごとに滅菌処理が必要とされている.■セミクリティカルは高水準消毒が必要であるが,一部のセミクリティカル器具(たとえば,粘膜に接触する体温計)は中水準消毒でもよい.CHAPTER 3 各器具・機器などに必要な洗浄・滅菌・消毒と,感染管理対策

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