インプラントYEARBOOK 2018
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ストローマン・ジャパン株式会社図1a~c 咬合力が強く崩壊の一途を辿っている.咬合平面の左右差があり,義歯の正中は右に傾き,下顎位も右側に偏位していた.欠損部の顎底は対合歯との関係を診ると,かなりの吸収が生じているのがわかる.症例1:BL,Roxolid®,SLActive®インプラントを用いた咬合再構成(図1~15)・患者年齢および性別:53歳,女性・初診日:2013年3月・主訴:嘔吐反射があり,これ以上義歯の範囲が大きくなるのは辛いとインプラント治療を希望.図2 デンタルX線10枚法.₂は二次う蝕が顕著で結果的に抜歯となってしまった.原因はバーティカルストップが喪失しているのに加え,₂ー₅ブリッジは連結されており,₃を支点としたフィッシュテールムーブメント(魚の尾びれのような動き)によって₂に応力が集中し,セメントウォッシュアウトにともなう微小漏洩が生じたと想定された.さらに₆,₈は近心傾斜している.図3a,b ゴシックアーチ(以下GoA)上で口腔周囲筋のストレッチを行うと,最大開口から閉じてきたポイントが左側前方に変位し,赤い咬合紙の点に収束してきた.その位置でバイトを採り,付着した模型上で診断用ワックスアップを製作した.同時に咬合平面を是正し,正中の傾きも改善している.根破折となり抜歯に至ったと問診や診査から診断した.つまり,過大な咬合力が歯の崩壊を後押ししていたと推察される症例であった.インプラント治療ではポジションの変更ができないため,将来的に構造力学的な問題を生じやすいシビアな症例では安定した下顎位でアンテリアガイダンスを付与し,インプラントの本数や補綴設計などの力学的な配慮が必要となる.そのため,事前の診査に重点をおき,診断用ワックスアップ,プロビジョナルレストレーションやプロビジョナルデンチャーなどによる再評価によって,まずは安定した最終補綴の位置を決定した. その後,Straumann®ガイドを使用して最終補綴可能な位置で,かつリスクの少ない外科処置の行えるポジションを模索した.結果的に良好な経過と患者満足を得られた(図1~15).abcab164Clinical Report

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