考えるぺリオドンティクス
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059歯周治療実践のための確かな治療法の選択と失敗の原因検証b.代表的な歯周疾患 歯周疾患は歯周組織破壊の有無によって歯肉炎と歯周炎に鑑別されます.歯肉炎はプラークによるプラーク性歯肉炎(単純性歯肉炎)と種々の修飾因子が加わった複雑性歯肉炎に分類されますが,修飾因子(ここでは症状を増悪させる因子)の違いによって細分類されています.また,プラーク以外の原因で生じる歯肉炎は「非プラーク性歯肉炎」に分類されます.c.プラーク性歯肉炎 プラークコントロールを中止すると,4日目から歯肉に炎症が生じます.これをプラーク性歯肉炎(単純性歯肉炎)と呼びますが,各種の修飾因子が加わって発症しているケースが認められます.プラーク性歯肉炎のなかには薬物依存性歯肉増殖症と壊死性潰瘍性歯肉炎が含まれます. このうち図11-1に示した降圧剤服用の既往がある患者に認められる薬物依存性歯肉増殖症の病因は,プラーク性歯肉炎に修飾因子としての薬物作用が関与して発症したと思われている病態が多いのですが,正確には薬物作用のみで起こる歯肉増殖症が薬物依存性歯肉増殖症と分類されています. もっとも現実には仮性ポケットあるいは真性ポケットにプラークがたまり,炎症が増悪される症状があります.グレーゾーンの問題で,その分類は困難です. 一方,歯肉の自発痛を主訴に来院する壊死性潰瘍性歯肉炎はストレス,喫煙,免疫応答の低下,さらにスピロヘータなどの細菌が修飾因子として関与している病態が多いという記載が以前からあります.しかし現在でも正確な病因は不明で,確固たる根拠に基づいた分類ではないため壊死性潰瘍性歯肉炎は基本的に症候群と考えるべきでしょう. 医科や歯科における疾患の分類は唯名論的に症候群的に捉えることから始まり,病態が分子レベルで解明されていないものは,いまだに症候群なのです. 図11-2に歯肉の自発痛および口臭を主訴に来院した42歳の男性の壊死性潰瘍性歯肉炎の症例を示します.問診からは仕事が忙しく,疲労感が強く,数日前から歯肉の痛みが消えないとのことでした. このような患者は喫煙者でコンプライアンスの悪い男図11-2 歯肉の自発痛および口臭を主訴に来院した42歳の男性の壊死性潰瘍性歯肉炎.喫煙者でコンプライアンスは不良.図11-3 扁平苔癬.図11-4a~c 天疱瘡.abc

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