SAFE Troubleshooting Guide Volume 3 外科的合併症編
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下歯槽神経麻痺て埋入手術を施行する。 突然のドリルの抜け感があった場合には、骨質の問題や埋入方向の不良による頬側(舌側)の穿孔の可能性があることから、CT撮影を行い、下顎管と埋入窩洞の位置関係を確認。損傷の可能性が疑われれば手術を中止する。ドリリング時の下顎管の損傷 埋入窩形成中(図3)に起きる事象として、①疼痛 ②異常出血 ③突然の抜け感の3点が挙げられる。 電撃的疼痛と持続的な出血がある場合は下顎管を損傷している可能性が高いため、手術を中止する。当日もしくは翌日再診時に、知覚異常があれば後述する薬物治療を行い、知覚異常がなければ後日改め「Sunderland分類」Ⅰ型:生理的伝導ブロックの状態で、Seddon分類のneurapraxiaに相当する。圧迫等が解除されれば比較的早期に回復する。Ⅱ型:Seddon分類のaxonotmesisに相当する。回復には時間がかかる。「Seddon分類」Neurapraxia(一過性神経伝導障害) 圧迫、牽引などによる可逆性の変化。髄鞘のみが損傷された状態で、軸索は保持された状態である。Axonotmesis(軸索断裂) 軸索の断裂、および末梢側のワーラー変性を伴う損傷。神経内膜は保たれており、回復が期待できる。Neurotmesis(神経断裂、軸索離断) 外傷などにより、神経内膜、周膜、上膜などを含む神経幹が解剖学的に完全に断裂した状態。自然回復は見込めない。図2 Sunderland、Seddonの神経損傷の分類(参考文献3より引用・改変)。図3 埋入窩形成時、損傷が疑われた場合の対応フローチャート。知覚鈍麻や麻痺の程度を患者が認識できないことも多いことから、術前に感覚検査を行うことも重要である。埋入窩形成埋入窩形成時の疼痛(電気ショック様疼痛)動脈または静脈の異常出血ただちに手術を中止同日もしくは翌日再診感覚検査施行専門医療機関へ知覚異常あり薬物療法改めてインプラント埋入手術施行知覚異常なし突然の抜け感CT撮影による下顎管との位置関係の確認損傷の可能性ありインプラント埋入手術施行損傷の可能性なし(骨質・埋入方向の問題)Ⅳ型:神経上膜のみ断裂せずに残っている状態。自然回復は見込めない。Ⅴ型:神経上膜まで断裂している状態。Seddon分類のNeurotmesisに相当する。Ⅲ型:神経内膜は断裂しているが、周膜は保たれている状態。自然回復は見込めるが、手術が必要な場合もある。49SAFE(Sharing All Failed Experiences) Troubleshooting Guide Volume3 外科的合併症編

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