パーシャルデンチャー治療 失敗回避のためのポイント47
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84第2部 治療編Ⅰ リジッドコネクションと リジッドサポート治療編第6項で述べた支持と把持が重要であるというパーシャルデンチャーの設計上の原則的概念には,リジッドサポートの優位性を是認する考えが背景に存在しています.リジッドサポートの概念は,わが国で1980年代前半に後藤ら1により提唱され,現在では日本補綴歯科学会でも推奨されている基本的な義歯の設計原則です.部分欠損歯列の補綴処置を担うパーシャルデンチャーでは,生理学的な被圧変位性に大きな違いのある残存歯と欠損顎堤とに同時に対応しなくてはなりません.この問題を解決するために,永きにわたる試行錯誤が続いてきました.支台装置に求められる要件が洗練され,辿り着いたのが,確実な支持機能と強固な把持機能によって支台歯と支台装置との間の可動性をなくした連結様式であるリジッドコネクションです.そして,さらに支台装置と義歯床との間の可動性(この場合は緩圧とも呼ばれる)が付与されていなければ(非緩圧と呼ばれる),リジッドサポートの要件が満たされていることになります.歯科補綴学専門用語集(第4版)では,リジッドサポートを「支台歯と義歯とを強固に連結して,歯根膜負担を主体とする部分床義歯の設計の概念」としています.また同じくコーヌステレスコープクラウンを「いわゆるリジッドサポートを代表する支台装置である」と定義しています2.Ⅱ リジッドコネクションとリジッドサポートは一体ではないしかしコーヌステレスコープクラウンを支台装置とするパーシャルデンチャーの適応症は,長い遊離端欠損症例でもあり,用語集に記載の歯根膜負担が主体のパーシャルデンチャーではない場合があります.下顎の長い遊離端欠損のコーヌステレスコープ支台のパーシャルデンチャーでは,長期間の使用で,経時的な床の遊離端後縁の沈下を起こすことがあります.このような場合の多くは,床内面にも内外冠間にも適合に変化が現れませんので,支台歯がわずかながら遠心傾斜したことになります.これはリジッドコネクションにより,義歯と支台歯が一体の歯列として口腔環境の変化に追随して適応した結果で,このことはリジッドサポートの概念の本質的な優位性です.混乱を避けるためにあえて補足しますが,比較的短い中間欠損で両側の支台装置にコーヌステレスコープクラウンを用いた場合は,いわゆる可撤性ブリッジへの応用となります.また,1歯遊離端欠損で支台装置にコーヌステレスコープクラウンを用いた場合は,可撤性延長ブリッジとなり,上記の長い遊離端欠損症例とは概念が異なります.リジッドコネクション~遊離端欠損症例における欠損の長さによる処置方針の違い~Treatment Edition 8

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