パーシャルデンチャー治療 失敗回避のためのポイント47
2/6

37無歯顎と部分欠損の違いは何か~歯冠を有する残存歯の存在と義歯構成要素の設計~第1部 診断編ができ,これらが咀嚼のコントロールにつながっていると考えられます.歯根膜と粘膜は被圧変位量が異なり,歯根膜は0.05 mm,粘膜は0.2 mmといわれています1.そのため咀嚼時などにパーシャルデンチャー上に咬合力が加わった場合,粘膜で支持される義歯床部は支台歯よりも沈み込みます.その結果として支台歯上のレスト間を結んだ支台歯間線を軸として,義歯床部の回転・沈下が生じます(図1-5-3).この回転・沈下により支台歯には,支台歯を傾斜させる側方力が,また顎堤粘膜には過大な力が加わることとなり,その結果,機能時の義歯床下の痛みだけでなく,長期的には歯の喪失や顎堤の吸収にもつながるのです(図1-5-4).このため,支台歯間線を軸とした義歯の回転制御が重要になります(診断編第7項参照).機能時のパーシャルデンチャーの動揺を抑制するためには,付与する咬合も重要な因子です.支台歯の歯根膜腔と骨植の程度や咀嚼時に歯に加わる負担を推察し,義歯の安定を考慮して咬合様式を決めることが多いでしょう.顎堤にのみ支持を委ねる総義歯と異なり,支台歯と人工歯への機能時の力の配分を考えるこ図1-5-2a~d 上顎のケネディーⅡ級に対するパーシャルデンチャーの2症例.acbd図1-5-3 ケネディーⅣ級における支台歯間線.図1-5-4a, b 回転・沈下により過大な荷重がかかり顎堤吸収を起こした症例.ab

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る