パーシャルデンチャー治療 失敗回避のためのポイント47
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36第1部 診断編Ⅰ 支持・把持・維持をどこに 求めるかパーシャルデンチャーは,総義歯とは異なり,支持・把持・維持の3要素を顎堤だけではなく残存歯にも求めます.これら3要素の多くを,残存歯に求めるのか,顎堤に求めるのかは,支台歯の存在部位や骨植のほか,顎堤の状態や残存歯列,咬合,そして上下顎の対向関係などを考慮する必要があります.1歯中間欠損に対するパーシャルデンチャー,いわゆる1本義歯では,3要素すべてを欠損の隣接歯に委ねます(図1-5-1).一方,1歯残存に対するパーシャルデンチャーでは,支持・把持・維持は主に顎堤に求め,支台歯となる残存歯には,骨植などによりその求め方を変えます.そのため支台歯の存在部位や骨植の状態などを義歯製作前に十分に診断することが,パーシャルデンチャーの臨床で失敗しないための出発点です.Ⅱ パーシャルデンチャーの設計パーシャルデンチャーの設計にあたり,支台歯の選定は,とくに臨床経験が少ない歯科医師にとって悩ましいところだと思います.慣習的には,初めに欠損部位とその歯数を基準に考えることが多いと思います.しかし,たとえ欠損部位が同じであったとしても支台歯の骨植や上下顎の対向関係などにより設計は必ずしも同じにはなりません(図1-5-2).画一的な設計ではなく,症例ごとの条件を考慮した設計をすることが残存組織の保全につながり,義歯の寿命にもつながると考えられます.考慮しなければならない事項が多い,この複雑さが,パーシャルデンチャーの臨床を難しくしている大きな要因です.1.被圧変位量の違いが回転・沈下を起こす総義歯装着者の咬合力に比較し,パーシャルデンチャー装着者の咬合力は大きいとされています.ほとんどのパーシャルデンチャーでは,粘膜支持とともに歯根膜支持であることで,咬合力の発現につながり,また歯根膜があることで,歯ざわりなどの繊細な感覚を感じ取ること無歯顎と部分欠損の違いは何か~歯冠を有する残存歯の存在と義歯構成要素の設計~Diagnostic Edition 5図1-5-1a, b 1歯中間欠損に対するパーシャルデンチャー.ab

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