「無理しない」「無駄にしない」矯正歯科治療13の視点と実践例
6/6

156❶ 下顎位が偏位しており顎関節に痛みなどの症状がある場合は,矯正歯科治療の前にスタビリゼーションスプリントで顎位を安定させ,痛みや不定愁訴を改善する❷ ①の後,CRバイトにて早期接触部位を確認し,下顎偏位が骨格性か機能性かを診断する➡     骨格性なら,外科的矯正治療の適応も考えられる難症例の可能性が高い➡ 機能性なら,慎重に分析したうえで矯正歯科治療のみを行う可能性が高い.ただし治療前に患者に上下の正中線が完全には一致しないことを説明しておく必要がある❸ 下顎側方偏位がある場合,矯正歯科治療後もスタビリゼーションスプリントで下顎位を安定させる.また犬歯のオーバージェットが改善できない可能性が高いため,上顎前歯や犬歯舌側面へのレジン充填によって,適切なアンテリアガイダンスを与えるケースもある❹ 上下顎骨体の横幅のずれが大きい症例では,矯正歯科治療後のABCコンタクトは期待できない.こうした症例では,義歯の配列でいわれる「歯槽頂間線法則」の考えで歯を並べてもよい(臼歯部の交叉咬合やリンガライズドオクルージョンでもよい)表2|上下の正中線が一致していない患者への治療ポイント図1|スタビリゼーションスプリント治療による下顎位の変化下顎位が左前方へ移動していることがわかる.◦初診時◦スタビリゼーションスプリント治療開始後2ヵ月後

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る