「無理しない」「無駄にしない」矯正歯科治療13の視点と実践例
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13図2|下顎前歯と口唇の関係下顎前歯が内側に入りすぎると,義歯の入っていない無歯顎患者のような口唇の外貌となる.下顎前歯が唇側傾斜していると,下口唇が前歯に押されて突出した翻転現象を呈す.この状態で矯正歯科治療を継続しても,側貌の改善には至らない.▪ 抜歯部位決定の重要性症例2(22ページ)と症例3(24ページ)は初診時同じような側貌でしたが,抜歯・非抜歯で別の治療方法を採ったため結果が大幅に変わった症例です.症例2は744755を抜歯,症例3は44のみ抜歯し治療しました.術後,症例2は若干の低位舌が認められ,上下口唇がやや内側に入り過ぎているようにも見えます.症例3は側貌やリップサポートともに良好です.このように,抜歯・非抜歯の決定や抜歯部位の決定は治療結果を大きく左右するため,軟組織や舌房の大きさも含めて慎重に行う必要があります.▪ 患者の審美的満足度も忘れずに口唇の厚い人,薄い人,下顔面高の長い人,短い人,鼻の高い人,低い人,太った人,痩せた人,若い人,年配の方などさまざまな患者がいるなか,それぞれの患者がもつ審美的基準を理解し,個人に合った仕上げを行うことが重要です.患者の期待と術者が行った治療の結果が一致していない,つまり術者は100点と思っていても患者にとって0点であれば,いい治療をしたとはいえません.また,抜歯矯正治療のやり直しはかなり難しいものとなります.悩んだら,まずは非抜歯治療を検討するべきです(症例2,3参照).抜歯・非抜歯を間違えると結果が大幅に違う

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