「無理しない」「無駄にしない」矯正歯科治療13の視点と実践例
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12図1|患者が審美性を求める軟組織の形態口唇閉鎖時に緊張がない口唇の周りの軟組織に縦じわが入らない(特に高齢患者は気にする)⇒上顎前歯の切端を下唇のドライウェットラインに触れる程度の位置に配列する口角部の軟組織が余っていたり,泡が溜まっていたり,口角が下がるような口唇の形態は好まれない(特に義歯を使用する高齢患者)上下顎口唇が内側に入りすぎると,口元がやや寂しい感じになり好まれない義歯未装着義歯装着中1視点と実践患者はもっともどこをみているか?▪ 軟組織(口唇)の審美性を見る矯正歯科治療では,非抜歯治療したほうが良い症例と抜歯治療したほうが良い症例,そしてどちらの治療も可能な症例があります.はっきりと非抜歯か抜歯かを決定できる状態や状況である場合はそのとおりの選択を歯科医師がすべきですが,どちらを採ってもある程度理想的なゴールを目指すことができるとなると,その決定に迷いが生じてくるでしょう.そうしたときに筆者は,歯根骨の幅も含めて舌,頬,口唇などの軟組織が緊張しない位置に歯を配列できる方法を採るようにしています.なぜなら,「軟組織の審美性を無視して矯正歯科治療を行っても,患者の満足度は低い」ということを経験上実感しているからです.もちろん非抜歯で治せるほうが良いことを前提として,治療後の軟組織の形態についてどういった予測が立つかを患者に説明・相談し,より満足度の高いゴールに至る方法を選択することが重要となります(図1, 2.症例1参照).抜歯・非抜歯の判断は軟組織(口唇)も合わせて慎重に考えよう

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