「無理しない」「無駄にしない」矯正歯科治療13の視点と実践例
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7▪ 超高齢社会への対応としての矯正歯科治療わが国は今後確実に超高齢社会となるため,誰しも健康寿命を延ばすことが求められます.そこに寄与するために目指すべき歯科治療のゴールは,「機能的に咬合できること」「安定した顆頭の位置で義歯,インプラントも含めて歯が機能すること」となります.そのためには,歯槽骨を保存することが重要となります.歯周治療のほかには,できるだけ若い時期に歯列を整えておくことも歯槽骨を保存する鍵となります(視点と実践9「矯正歯科治療と歯周疾患の問題」参照).機能的に並んだ歯列や,矯正歯科治療それ自体によって歯槽骨が改善したり,保たれることがあるからです.その他プラークコントロールが行いやすくなるなど,矯正歯科治療は多岐にわたる疾患改善や健康維持に寄与します.▪ 採るべき矯正歯科治療の方法とは筆者はこれまで,矯正専門医兼一般歯科医として補綴医や歯周病専門医の視点もあわせもちつつも,どのような考えで矯正歯科治療を行い,その結果がどうなり,どう安定を得ているのか,長い経験と多くの知識の蓄積でもって検討してきました.その結果,「無理しない」「無駄にしない」矯正歯科治療というコンセプトが,長期安定と患者の口腔の健康にもっとも大きく寄与できるとの考えにいたりました.必要な診査(表1)と治療目標の設定,矯正歯科治療成功の条件(図2),口腔機能の優先順位(後述),そして長期安定する「無理しない」「無駄にしない」矯正歯科治療のポイント(次ページ表2)を間違えなければ,一般歯科医でも矯正専門医でも十分な治療を患者に提供することができます.表1|矯正歯科治療に必要な診査項目❶中心位での臼歯部の咬合関係を確認 ➡ 咬頭嵌合位(ICP)≒中心位(CR)でのアンテリアガイダンスを得る❷軟組織分析(口唇の突出状態,口唇閉鎖時における軟組織の緊張状態の確認など) ➡ 抜歯・非抜歯の決定❸セファログラムを用いたANB,FMA,IMPA,U1 to ANS PNSの計測と分析 ➡ 抜歯困難な歯軸の確認❹抜歯予定歯の歯周組織やう蝕の状態確認 ➡ 歯周病罹患歯,失活歯の優先抜歯❺CBCTを用いた舌の位置,上顎洞の炎症の状態確認 ➡ クワドヘリックスを用いた側方拡大の必要性を確認図2|矯正歯科治療が成功したといえる条件❶下顎位が安定している❷適切なアンテリアガイダンスが得られている❸審美的な口元に仕上がっている❹鼻呼吸がしやすい❺舌房が狭くない序章

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