「無理しない」「無駄にしない」矯正歯科治療13の視点と実践例
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6長い人生,ずっと元気に噛んでもらうために▪ 矯正歯科治療を行う意味は広がっているわが国民の健康意識はどんどん高くなっており,昔に比べてう蝕は確実に少なくなっています.今後さらに歯周病患者の数や欠損補綴を行うことは少なくなるでしょう.しかしこれらの歯科疾患がゼロになることはないですし,遺伝的な問題や口呼吸といった後天的な悪習癖なども加わり,歯列不正の原因がなくなることもないでしょう.こうしたわが国の口腔の問題として残る不正歯列・不正咬合は,審美的な問題だけではなく,開咬や前歯部反対咬合によるアンテリアガイダンス喪失や臼歯部の過重負担,叢生によるプラークコントロール不足を引き起こします.またう蝕や歯周病,交叉咬合・鋏状咬合による臼歯部咬合不全,上下前歯突出や上顎歯列弓の狭窄による口呼吸,上下顎骨のずれによる咬合不全,根管治療の治癒遅延や歯周病の再生力にも影響します.これらのことをふまえ,矯正歯科治療がさまざまな口腔疾患の原因除去につながると筆者は考えます(図1).不正咬合がう蝕や歯周病,歯の喪失,顎関節症を招くリスクが高いことを知れば,矯正歯科治療を希望する患者は増えるのではないでしょうか.そうなれば,矯正歯科専門医はもちろん,経過的に患者を診るかかりつけの一般歯科医も,矯正歯科治療による疾患の原因除去に大いに貢献できます.これからの日本で矯正歯科治療を行うために必要な視点とは図1|筆者が矯正歯科治療によって除去に貢献できると考える口腔の問題

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