DIGITAL DENTISTRY YEAR BOOK2017
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19はじめに デジタルテクノロジーの飛躍的な発展に並走し、最近のデジタルデンティストリーはまさにブレークスルーした感がある。歯科分野においては画像診断領域が先鞭をつけ、エックス線写真のデジタル化だけでなくCTやMRIの開発により、診断精度は格段に向上した。その後、CTや3Dスキャナーにより記録された三次元デジタルデータはインプラント診断や埋入手術を強力に支援するようになり、今日、インプラント診療においてデジタル技術は欠くことのできない存在となっている。 一方、旧来の補綴装置の製作は、歯科医師あるいは歯科技工士の知識や技術に大きく依存していたが、デジタル技術の導入によりヒューマンエラーが排除され、均質で再現性の高い画一的な製法に移行しつつある。スキャナーの操作性と精度の向上に加え、CAD/CAM機器およびソフトウェアの開発により、デザインから品質、新素材の導入まで画期的な進化が認められており、補綴装置製作のワークフローが根本から変化しようとしている。 本稿ではデジタルデンティストリーに関して、CAD/CAM技術を用いた補綴装置の製作を中心に、画像診断からインプンラントガイデッドサージェリー、医療情報システムや歯学教育の進歩について現況と将来展望を概説する。デジタル画像診断 歯科領域のデジタル化は放射線分野においてもっとも早くから進展し、一般臨床にも広く普及した。デジタル化により、①被曝線量の大幅な低減、②コントラストや輝度を自由に調整できることによる誤読影の減少、③画像データが劣化しないため画像管理が容易、④現像液や定着液などの廃棄物処理が不要になったことによる環境保護、などの多大な恩恵があった。欠点として、解像力がアナログよりもやや劣ることが指摘されているが、日常臨床ではほとんど影響のないことも証明されている1。 画像診断のデジタル化は歯科用コーンビームCT(CBCT)へと発展し、一般臨床に急速に普及しているだけでなく、現在では画像データの送信による遠隔診断へと展開している。デジタル画像診断の開発によりインプラント埋入も飛躍的発展を遂げることになる。 デジタル画像の近未来としては、1度のパノラマ撮影から多断層のパノラマ像を再構成するトモシンセシスや、被曝線量を低減し高い感度と定量性を有するフォトンカウンティング(光子計数)検出器などの最新技術が期待されている2。ガイディッドサージェリー 1990年頃までは、埋入位置と埋入方向を指導する金属製チューブを埋め込んだ診断用ガイドプレートを装着した状態でパノラマエックス線写真を撮影する二次元での診査・診断が主流であり、骨量を探査することに主眼を置いた外科主導のインプラント治療が行われていた。1990年代からは CTを用いた三次元的診査・診断が実施されるようになり、シミュレーションソフトの開発が拍車をかけ、補綴主導のインプラント治療が具現化できるようになってきた(図1~3)。その後は各社がシミュレーションソフトを販売するようになり、CTデータと模型データのマッチングによる高精度な埋入位置を指導するサージカルガイドが利用されるようになった3。 今日、高い安全性を実現するためにガイディッドサー図1 インプラント治療の術前検査。口腔内写真、パノラマエックス線写真に加え、CT撮影は必須の検査である。

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