歯科衛生士のための臨床歯周病学のエビデンス活用BOOK
6/6

メカニズムベースとエビデンスベースCoee Break 1 「エビデンスベース」、あるいは「エビデンスに基づいた治療」という言葉がよく使われています。筆者自身もその考え方で日々臨床に取り組んでいますが、時々これらの言葉について誤解されているのを見かけます。 たとえば、急速破壊性(侵襲型)歯周炎の特徴として、細菌学的なことや血清抗体価の動向などが挙げられています。これに基づいて、細菌検査や抗体価測定を行うことはエビデンスに基づいた考え方でしょうか。残念なことに、実際には細菌検査や抗体価によって鑑別診断ができるというエビデンスはありません。実際に重要なことは、患者さんが歯周炎に対して感受性が高いか低いかであって、鑑別診断すること自体、特に重要ではないかもしれません。日本ではなぜか「基礎医学的な裏付け」が重要視される場合が多いのですが、これとエビデンスはまったく別物と考えなければなりません。 昔、米国で、ある心疾患にたいして抗痙攣剤が効くだろうということで、普通に処方されていた時期がありました。その心疾患に対して抗痙攣剤を使用するというのは理にかなっているように思えたので、多くの臨床医が処方していたわけです。しかし、実際に死亡率を調べてみると、その抗痙攣剤を処方した患者のほうが高かったことがわかり、現在では処方されなくなりました。「心疾患に抗痙攣剤が効くだろう」と考えるのはメカニズムベースの考え方で、実際の死亡率に基づいた考え方がエビデンスベースです。 もう少しわかりやすい例で言うと、「プロービングは組織を破壊するだろうからやってはいけない」というのがメカニズムベース、「プロービングをしても組織に非可逆的な傷害を起こさないことが実験で確認された」というのがエビデンスベースです。23

元のページ 

page 6

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です