天然歯審美修復のセオリー図解Q&A
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94 AnswerQuestionキーワード:5.クラウン・ブリッジ修復編 2)支台歯形成フィニッシュライン、圧排フィニッシュラインの設定に関しては、さまざまな考え方があります。昔は歯周治療に対する考慮もあり、歯肉縁上に形成しなければならないという時代もありました。これは、フィニッシュラインが歯肉縁下にあった場合、きれいな印象が採れないと考えられていたからです。また、そこから立ち上がるサブジンジバルカントゥアの形態は、ストレートに立ち上がったほうが清掃性はよいと思われていました。現在では、この形態は清掃性がよい反面、歯肉のサポートができないため、プラークが歯肉溝に侵入しやすいとの意見もあります。また、縁上形成の考えとは逆に、滲出液の宿る歯肉縁下深い形成ほど問題が生じにくいという考え方もあります。ただ、この方法では、印象採得の独特な方法が必要なようです。いずれにせよ、それぞれの方法や考え方にメリット・デメリットがあるという認識は必要です。本項では、基本に忠実かつ無難に「審美性を損なわない」、「精密印象が取りやすい」、「歯肉をサポートし清掃性も得る」という観点から、質問に答えていきます。相談者:T. S.さん29歳、勤務医フィニッシュラインはどの位置に設定すればよいでしょうか? また、圧排糸を巻く際の注意事項やテクニックがあれば教えてください。フィニッシュラインの設定目標は「補綴と歯周組織との調和」Point1 歯科医師と患者がめざす最終目標は、歯肉に調和した補綴物の製作です。マージンの露出やレッドバンド(補綴物の周囲にできる炎症のライン)を生じていないかを確かめるには、口腔内写真を撮影してみるのが有効です(図1)。レッドバンドが認められる場合は、プラークコントロールの不良、歯石やセメントの取り残し、マージンの不適、生物学的幅径の侵襲、咬合性外傷等が考えられます。マージンの設定とも大きくかかわっていることがわかります。中村茂人 回答者 レストレーションで再評価を繰り返し、個々に見合った適正なフィニッシュラインを模索する必要があります(図2~5)。 歯周組織との調和を獲得するうえでは、マージンの設定が重要であることがわかりましたが、実際には歯肉の厚み、歯槽骨頂の位置、生物学的幅径の距離、歯肉溝の深さ等は個人差があります。そのため、プロビジョナルプロビジョナルレストレーションが鍵となるPoint2026

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