小児のエンド
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30ⅠⅡⅢⅣⅤⅥ【  診査・診断  】(5)慢性増殖性歯髄炎【臨床所見】 主訴は咀嚼障害で時々出血を訴えることがある.齲蝕による実質欠損は大きく,歯髄まで達し,齲窩に息肉(ポリープ)の存在が認められることが多い.軟化象牙質は湿性で打診および温度診ともに反応はなく,歯周組織の状態は正常である.エックス線診では歯根周囲の透過像を認めることがある.電気診はvitalを示すが,齲蝕が大きいため測定しにくい場合がある.電気抵抗値による判定は開放性である.【病理組織学的所見】 慢性増殖性歯髄炎において,歯髄の開口部より歯髄組織が増殖し息肉を形成する.息肉は増殖した多数の線維芽細胞,形質細胞のほか各種の白血球,リンパ球,新生血管よりなる.息肉の表面には重層扁平上皮を有する場合が多い.固有歯髄は円形細胞浸潤を認める肉芽組織となって,根部歯髄に波及することがある.肉芽組織変化の範囲では,象牙芽細胞層の消失をみる.また,血管は著しい拡張を認める(図Ⅱ-8).【処置所見】 臨床診断による慢性増殖性歯髄炎の病理組織像からみて,本症は開放性の齲蝕であるが,齲窩内に増殖性組織(ポリープ:polyp)の存在を認める.それぞれ由来する増殖性組織により歯髄ポリープ,歯根膜ポリープ,歯肉ポリープと呼んでいる.齲窩内のポリープの由来は臨床的に判断しにくい.歯髄ポリープの場合は歯髄の生活力は旺盛であるため,生活歯髄切断処置がよいと考える.しかし,歯髄の変性が著しく,どの部分から正常歯髄であるのか臨床的に判断しにくい.生活歯髄切断処置をする場合は切断部を低位に行うことが望ましい.これも第二次的診断によって判断されるとよい.とくに切断部からの出血状態は正常時より異常であると思われた場合は抜髄処置のほうが得策である.FC法が有効.AB図Ⅱ-8 慢性増殖性歯髄炎の病理組織像A:歯髄ポリープ(矢印)(①歯髄).B:歯根膜ポリープ(矢印)(②歯根膜)①②

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