小児のエンド
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10ⅠⅡⅢⅣⅤⅥ【  乳歯の歯髄炎  】2乳歯の歯髄炎1歯髄炎の経過 歯髄組織の炎症は他の結合組織の炎症と同様である.これは組織における循環障害(充血・血行静止),滲出液,遊離細胞の増殖および滲出を伴う局所的防御反応である.また,細胞は混濁腫脹,脂肪変性,萎縮変性および壊死を起こす.炎症の原因には,外来の物理的,化学的,細菌的刺激のほかに内在性の毒素物質がある.経過は急性,亜急性,慢性,亜慢性に分けられる.形態的には変質性炎,滲出性炎(漿液性,線維性,化膿性,出血性,腐敗性,カタル性)に分けられる.また,歯髄内の炎症の広がりによって一部性歯髄炎,全部性歯髄炎に区別している.一方,歯髄が露出せず感染象牙質で覆われていて感染した歯髄炎を閉鎖性歯髄炎,歯髄が露出していて感染している歯髄炎を開放性歯髄炎と呼んでいる.他に外傷によるもの,また根尖部や歯周組織から感染する上行性歯髄炎の場合もある. 歯髄炎の範囲は感染した歯髄から波及し,最初は小範囲でも時間の経過と感染源の放置により拡大の一途をたどる.症状は無痛状態から軽度な疼痛,激しい疼痛,また歯肉部の違和感,疼痛,腫脹および歯の機能的障害へと症状は激化するのが通常である.しかし,急性炎症から慢性炎症に,慢性炎症から急性炎症に移行する場合もある.最終的には壊疽に陥り歯周組織炎や根尖病巣の形成に移行してしまう2),3),4),6).Question小児が訴える歯痛とは? 歯髄炎・歯周組織炎による疼痛:浸透痛,温度痛,咬合痛,食物痛,接触痛などで,疼痛の種類は一過痛,間歇痛,持続痛,軽度痛,激痛などを訴える場合がある. 歯肉炎による疼痛:歯周および隣接面歯肉の炎症,歯の萌出時の炎症,外傷による歯肉の損傷・炎症,残根周囲の炎症など. 舌・頬粘膜による疼痛:外傷および交通事故による損傷・炎症,全身疾患からの歯肉炎,口内炎など. その他:齲窩歯内の埋入食物残渣,修復物の過剰負担による違和感および疼痛,顎関節痛,耳鼻疾患,リンパ腺腫脹時の疼痛,また患児の疼痛錯誤など.

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