抜歯しない埋状歯の矯正歯科治療
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128特徴いくつかの症例報告はあるが,第一大臼歯の萌出障害の発現頻度は低い16.新潟大学医歯学総合病院小児歯科において43,処置した萌出障害症例の中で上顎大臼歯は9.9%,下顎大臼歯6.7%であった.上顎では第一大臼歯が多く,その2/3は第一大臼歯が第二乳臼歯の下に位置する異所萌出であった(図7).下顎第一大臼歯の異所萌出は,上顎の頻度より低かった.また歯胚の形成遅延による萌出障害もあり,処置せず経過観察することで萌出するものもある(図8)52. 単に抜歯あるいは放置したものが多く,開窓・牽引により矯正歯科治療を行った症例はわずかである.原因埋伏率が低い要因は,永久歯として早期に萌出する第一生歯であることである.また歯胚形成が隣在歯より早期であり,萌出に際し交換の過誤や空隙不足がほとんどない.さらに外傷を受けにくいことも挙げられる.診断日本人の大臼歯の平均萌出年齢より遅延,または,反対側同名歯が萌出したにもかかわらず未萌出の場合,萌出障害を疑う1,2.疑いのある場合,パノラマエックス線写真を撮影し,歯の位置,方向,屈曲などの形態の状態,および隣在歯の状態を調べる.萌出方向異常の場合,開窓や牽引の際に歯胚の回転を行う必要がある16,19.牽引・誘導時には牽引のリアクションを考慮しなければならない11-14.萌出空隙不足の場合でも,矯正歯科治療による拡大治療で保存できる症例もある.形成異常や骨性癒着が認められない限り萌出誘導を試みるべきだが,歯胚の形成遅延による萌出障害もあり,経過観察を必要とする症例もある52.第一大臼歯各論:第一・第二大臼歯の埋伏6特徴第一大臼歯より埋伏頻度は高い16,43.また,上顎より下顎の頻度が高く,第三大臼歯とともに埋伏することもある.これは,第三大臼歯歯胚形成により第二大臼歯の萌出障害が発生すると考えられる.下顎第二大臼歯は,第一大臼歯との間に嚢胞が発生することで第二大臼歯が近心傾斜し,埋伏智歯に類似した状態を呈することがある.原因歯冠の近遠心径が異常に広く,歯根近遠心径が狭い第一大臼歯の場合,遠心最大膨隆部の下は陥凹を呈し,これが萌出経路の袋小路となって埋伏の原因となる.次に歯胚の方向異常,特に近心傾斜の場合に第一大臼歯に接触した埋伏がしばしばみられる.また下顎第二・第三大臼歯の歯冠近遠心径の和に対する,下顎第一大臼歯歯冠の遠心最大膨隆部から下第二大臼歯

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