抜歯しない埋状歯の矯正歯科治療
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57Part2|埋伏歯非抜歯治療に必要な知識とメカニクス図38| スライディングメカニクス (参考文献15,26より引用改変)欠点1空隙閉鎖に用いる力の大きさの明確なガイドラインがない2 エラスティックやスプリングにより加える力が大きすぎると,歯を直立する十分な時間が不足し,歯の傾斜を生じやすい利点1ワイヤーベンドを行わないため,チェアタイムが短い2 臼歯部スロットを滑るスライディングメカニクスにより,確実に空隙閉鎖を行える3 活性化量に制限がない表10| スライディングメカニクスの欠点と利点(参考文献47より引用改変)インチスロットのブラケットを選択し,0.019×0.025インチのステンレスワイヤーを推奨する.しかも,もっと太いワイヤーを用いれば,咬合挙上に有利であるとも述べている.また,「ラウンドワイヤーやサイズの小さい角型ワイヤーを代用することも可能であるが,歯根の移動やオーバーバイトのコントロールは不確実になる」と述べている.つまりコーカシアン(白人)の場合,咬合力の強いローアングル症例が治療対象であるため,咬合挙上に有利な0.022インチのスロットを用いると考えられる.もちろん本邦でも,咬合力の強いローアングル症例と診断された場合は,0.022インチのスロットシステムを選択すべきである.一方,小坂49は0.018インチのスロットのブラケットを選択し,0.016×0.016インチのコバルトクロムワイヤーを推奨する.これは,ブラケットの「あそび」を大きくし,スライディングを妨げる要因を減らす試みである.また本邦において,咬合力が比較的弱いハイアングル症例が治療対象となる傾向がある.ハイアングル症例は前歯被蓋を深くする治療を行うが,剛性の低いワイヤーはこのために有用である.まとめると,ローアングル症例とハイアングル症例は,スライディングメカニクスといえどもスロットとワイヤーサイズが異なるものを選択すべきであり,しかもワイヤーの調整も異なる.ワイヤーの調整ローアングル症例の特徴は,前歯部被蓋が深く,術中に咬合挙上を行うことが難しく,しかも術後に被蓋が深くなることである.一方,ハイアングル症例の特徴は,前歯部被蓋が浅く,術中に被蓋を深く図39| 空隙閉鎖によるスピーカーブ (参考文献15,26より引用改変)

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