抜歯しない埋状歯の矯正歯科治療
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Part1|埋伏歯とは何か11埋伏の原因全身的要因と局所的要因全身的要因は,鎖骨頭蓋異形成症,大理石病,くる病,内分泌障害,遺伝などがある1,2,4,7.局所的要因は,萌出空隙不足,歯胚の位置異常,顎骨嚢胞,腫瘍などがある.また,萌出を妨げる隣在歯,歯を覆う緻密な骨,厚い軟組織などが挙げられる2.永久歯が萌出するには,それを覆う歯槽骨と乳歯歯根が吸収されなければならず,しかも歯肉を押し破らなければならない.そのため過剰歯,硬化性の骨,硬い線維性歯肉も萌出阻害要因となる1,2.これらの萌出阻害要因が,鎖骨頭蓋異形成症には存在する1,2,7.鎖骨頭蓋異形成症の小児における多発性の過剰歯は,歯の萌出を機械的に阻害するばかりではなく,骨吸収が起こらず,歯肉が硬く線維質である.これらのため,萌出を遮る過剰歯をすべて抜去するばかりではなく,永久歯を覆う骨を除去し,歯が口腔内に出るように歯肉を翻転する必要がある.これほど重症でない症例でも,永久歯の萌出遅延があると,他の歯が歯列弓内の異常な位置へ移動することもある.小児歯科医や矯正歯科医は,埋伏歯に遭遇することが多い.埋伏となる主な局所的要因は,歯列弓の長さ不足であり,萌出する空隙がないことである.ディスクレパンシーと呼ばれる問題で,歯冠幅径の合計の長さより歯槽堤の長さが短いともいわれる.また,萌出遅延や乳歯の早期喪失による隣在歯の傾斜移動が挙げられる(表4).萌出空隙の不足埋伏の発現頻度の最も高い歯は,上下顎第三大臼歯である(図1)4-6.第三大臼歯が埋伏となりやすいのは,萌出に充分な空隙が確保できず,最後に萌出するためである.上顎犬歯(図2)と下顎小臼歯(図3)も,側方歯群の中で,最後に萌出するため埋伏図1| 埋伏の例 [1] 第三大臼歯の埋伏20歳0ヵ月の男性.₈₈₈₈の埋伏.35歳7ヵ月の女性.₃の萌出方向異常による半埋伏.₂の口蓋側に当該歯の尖頭を目視で確認できる.図2| 埋伏の例 [2] 犬歯の埋伏49歳4ヵ月の女性.₅の半埋伏.視診で頬側咬頭を確認できる.図3| 埋伏の例 [3] 下顎小臼歯の埋伏

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