抜歯しない埋状歯の矯正歯科治療
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10埋伏の発生頻度埋伏頻度は下顎第三大臼歯が最も高く,次いで上顎第三大臼歯である5,6.次に頻度はかなり低下するが,上下顎の犬歯,中切歯であり,これらの埋伏頻度は同程度である.他の永久歯の埋伏頻度は,これらに比してかなり低い(表2, 3).埋伏とは部位₈₈₈₁₃₈45₃2計症例32731139323128864786%41.639.65.04.13.93.61.00.90.5100.0表2| 部位別埋伏頻度 (参考文献5より引用改変)1 萌出空隙不足 (ディスクレパンシー・隣在歯の傾斜移動)2 歯胚の位置異常,形成異常 (萌出方向異常)3 単純遅延 (骨の硬化,線維性歯肉,低位乳歯)4 嚢胞・腫瘍 (濾胞性歯嚢胞・歯牙腫など)表4| 埋伏の居所的要因 (参考文献1,2,4,7より引用改変)1下顎第三大臼歯2上顎第三大臼歯3上顎犬歯4下顎小臼歯5下顎犬歯6上顎小臼歯7上顎中切歯8上顎側切歯9上下顎大臼歯表3| 歯種別埋伏頻度(参考文献6より引用改変)一定の萌出時期を過ぎても,歯冠が口腔粘膜下または顎骨内に留まることを「埋伏」という1.埋伏歯は,萌出誘導を行わない,あるいは被覆している組織が吸収されない限り萌出することは稀である.また未萌出歯という用語は,「埋伏歯」「萌出途上の歯」という2つの意味をもつ4.一方,萌出障害(eruption disturbance)は,何らかの原因で歯が正常に萌出しないことである.これは未萌出歯の意味と重なるが,萌出障害は永久歯交換期に用いる用語と考えられる.埋伏歯の抜去は,年齢を重ねるごとに困難になる.また,埋伏歯を放置することで,局所の炎症巣の悪化,隣在歯周囲の骨の喪失,近接する重要臓器の損傷などの問題を発生する可能性もある.加えて,人生の後半にさしかかると,全身状態が悪化し,周囲の骨が硬化する可能性があり,抜歯術は複雑かつ困難になる.したがって,予防歯科的および口腔外科的視点からは,抜歯によるリスクが深刻でない限り,合併症が発生する前に埋伏歯を抜去すべき,との見解4もある.一方,矯正歯科的視点からは,埋伏歯を歯列に配列,保存可能である症例が多く,矯正歯科治療による萌出誘導による配列・保存を検討することが望まれる.埋伏歯2

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