患者さんの不安・疑問に答える
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10章 治療時に説明しにくい処置の説明歯内療法専門医に転院を勧めるとき160 確かに根管治療が困難な症例はあります.たとえば高齢のため根管が石灰化し閉塞している場合,またすでに根管処置が終了し根管には支台ポストが装着されているけれども,新たな根尖病巣が認められる場合などです. 石灰化して根管閉塞はしているが症状が認められない場合には,無理に開ける必要もないのですが,根尖部に病巣が存在し根尖性歯周炎を疑われるときには,やはり根管口から開口し細菌の排出路,調薬する道を確保する方がよいでしょう.歯髄腔内の石灰化は二次象牙質,あるいは修復象牙質などと呼ばれ外来刺激に対する生体の防御反応の結果生じるとされています.そうすると当然のことながら高齢者では長い年月をかけて石灰化しているので,リーマーやファイルを入れようにも簡単にはいきません. また,根管が曲がっているときも治療は難しいでしょう.細いサイズのファイルからはじめてもなかなか思うように根管が拡大してくれませんし,無理に拡大していけばあらぬ方向に孔が開いてしまう危険性があります.そうすると新たに感染源を作ってしまう元となり,また根尖に届かないために先端の感染部分がそのまま残されてしまう可能性も高いといえます. 石灰化による閉塞根管,湾曲した根管以外にも,上顎の大臼歯部では根管口を簡単にみつけられないこともあります.また通常より根管の数が多い場合もありますし,樋状根のように一つにつながっているのもあります.そうすると通法ではなかなか十分な根管治療,根管充填ができない可能性が高いのです. ときにはリーマーやファイルが根管内に折れ込んでしまい,それを除去することができないこともあります.自分自身が折れ込んだわけではないけれども,他医院での処置で,すでに折れ込んでいることもあるでしょう.そういう場合の根管処置はとても難しいものがあります. また図1のように根管にポストが装着されているときには,それを除去することに慎重な対応が必要です.無理に力をかけてしまえば歯の破折や亀裂を生じてしまい根管治療さえできないこともあります. 要は自分の技術では十分な治療が行われないと判断される歯内療法専門医に転院を勧めるとき患者対応ポイント症例の難易度,自身の力量,設備などを考えて専門医への紹介を判断する無理だと判断したら,患者さんに正直に説明する歯内療法専門医の治療は自費診療であることが多いことを説明する歯内療法における保険と自費の違いを説明する安田 登

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