なせかと考える口腔外科
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186「先駆者たちの功績」外科的治療の変遷試行錯誤の歴史 顎変形症手術は,口腔外科において一般的な定型手術となっており,患者さんに標準治療を提供できるまでに進歩した.現在では,大学病院だけでなく,市中病院の歯科口腔外科でも,安心して治療が受けられるようになった.本手術がここまで定着するには,多くの手術法が生まれ,試行錯誤を重ねた長い道のりがあったからこそである. 1898年,矯正歯科医Angle(不正咬合分類のAngle)は,アメリカのセントルイスの地で,同地の形成外科医Vilray Blairに,下顎前突症の外科矯正手術を依頼し,下顎骨体部部分切除術による短縮を行った16).その後20世紀に入ると,顎変形症手術は,第二次世界大戦の後に,ObwegeserがWassmundやTraunerとともに手術法を考案し,目覚ましい進歩を遂げた. しかし,彼らの功績の陰で,忘れてはならない歯科医師Simon P. Hullihenの存在があった17).19世紀に新大陸アメリカの地で手術が始まった:顎変形症手術の揺籃期<Hullihenの功績> Hullihenは正確にいうと,一般外科医の免許を持ったダブルドクターであった. 1810年,彼はアメリカの西ペンシルベニアで,アイルランド人の農家の次男坊として生まれた.すくすくと育ち,やんちゃな男の子であったのだろう.9歳のときに,石灰窯で両足にひどい火傷を負った.この火傷で,Hullihenは2年もの長い間,地元の医師の治療を受けながら,寝たきりの生活を送ることになって

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