なせかと考える口腔外科
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123CHAPTER 4「舌下ヒダ三題噺」口底部に腫脹をきたす疾患唾石症の臨床的特徴 唾石症(sialolithiasis)は,結石ができたおかげで,唾液分泌を障害する閉塞性疾患であり,比較的よく遭遇する.また,唾液腺疾患の約半分がこの唾石症である.ヒト解剖体における研究では,健常個体の1.2%に唾石がみられたことが報告されているが,症状がみられる唾石症は,その約1/3で0.45%にすぎない.発症年齢をみると,40歳代以降の中高年層に多く認められる.性差では,一般的に男性に多いとされていたが,最近の報告では,差がみられないことが示されている.結石の数は,80%が1個,残り20%が2個で,頻度は少ないが3個以上みられた例もある.唾石の大きさは,砂粒大から2~3cmと大きなものまで,さまざまである21).また,唾石の形状は,腺管でみられるものは通常細長く,腺体や腺管,腺体の分岐部(hilus)に存在する場合は球形,卵形をとる.唾石の内部は,積層構造をとることで,木の年輪のように見える(図4-6).ほとんどの例で,片側性に症状をみるが,なかには同時に左右の唾石を認めるものもある.唾石は,口底部に走行する顎下腺管内でみられることが多いため,ガマ腫と同様に,口底の腫脹として症状がみられる.口腔内からは,腫脹部に硬固物を触れ,エックス線写真撮影で不透過像が認められれば,容易に診断がつく(図4-7).しかし,図4-6 唾石のH-E染色病理組織像唾石の内部は木の年輪のように見える.Scale bar=2mm(写真提供:北海道医療大学歯学部,臨床口腔病理学分野,西村学子博士)

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