なせかと考える口腔外科
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122「唾液分泌を障害する」唾石症唾石はいつから認知されたか? 体の中に石ができることは,まれではない.石は,腎臓,膵臓,胆囊,耳,唾液腺とさまざまな臓器にできる.われわれが地球上で生活するうえで,身体の3次元的位置関係を把握する装置として,耳の三半規管が存在している.この内部の耳石器には,たくさんの耳石がみられるが,この小石が,たまたま耳石器から転げ落ちて,三半規管の中をさまようと,めまいや吐き気が起こる.耳石以外は,出生後の経年変化で結石が形成されるようになり,多くは人が摂取する食物との関係で形成されることが多い.結石によって症状が出るのは,腎臓でつくられた石が,尿管に移動して,閉塞してしまう尿路結石が多いようだが,このような尿路結石は1%にみられるにすぎない.細くて柔らかい尿管に結石が詰まるので大変痛い.紀元前の古代エジプト人のミイラからも発見されている.おそらく,唾石も同じように歴史が古いのかも知れない. Wakeleyが1929年Lancetに報告したものによれば,19世紀にThorowgood(1872)が長さ2.8cm,胴まわり5cmの唾石を報告しているのが最初のようだ.Wakeley自身,早くもこの報告で12例の顎下腺唾石の組成解析を行い,炭酸カルシウムが75%,リン酸塩が10%であったことを報告している.また,この報告例で導管中の唾石以外の異物として,ストローやガラスの破片,魚骨,毛髪が導管に停滞し,長い時間を経て,結石が形成されると説明している19).また,Roberg(1904)が報告した47例の唾石症でも,唾石以外の異物がしばしばみられたことを紹介している20).ちょうど,アコヤ貝に核入れをして,真珠を形成させる様とよく似ている.

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