なせかと考える口腔外科
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60「膿瘍の切開法」嫌気性感染症であるがために必要不可欠な技切開のコツ 歯性感染症は,複数の嫌気性細菌が原因である.その特徴は,組織の深いところで症状を起こすことである.そのため,組織破壊力が著しく,膿瘍を形成する傾向が強い.このことから,適切な抗菌薬を投与した後,大半は,外科的な切開術を施行し排膿をはかることが必要になる. 歯性感染症の多くは,口腔内に膿瘍を形成してくる.この場合,粘膜が腫脹している部分に,膿瘍が存在するか否かを判断する必要がある.まず,左右の示指を使用して,波動が触れるかどうか確かめる.波動を触れるということは,腫脹部分が最初は硬かったものが,軟化してきたことを教えてくれる.次に,粘膜直下に膿瘍が近接しているか否かを確かめるために,過酸化水素水を含ませた綿球で,粘膜を拭ってみる(図2-23A).すると膿瘍が近接していれば,カタラーゼ反応として,発泡現象を観察することができる(図2-23B).しかし,深い部分に膿瘍があるとカタラーゼ反応を確認できないことがある.そのようなときは,穿刺して膿汁が吸引できるかどうかで判断がつくであろう. このようにして,膿瘍切開の時期が確認できたら,次に切開時の痛みを取り除くため浸潤麻酔を行う.浸潤麻酔液は,決して膿瘍腔に注入することなく,膿瘍腔の周囲に,麻酔液の注入を順次行って隔壁をつくるようにするのがコツである(図2-23C).まず麻酔液は針のカット面を上にして注入する(図2-23D).これは麻酔液が被膜を破って膿瘍腔内へ広がらないための策である.その後,3~5分経過して麻酔が走行しているのを確認したのち,膿瘍の直上から切開する.このときに用いるメスは,尖刃刀(No. 11)で,押して

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