Digital Dentistry YEARBOOK 2016
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デジタル印象採得が従来法に取って代わることは可能であるし、またそうなるということを疑う余地はない。現在のところ、その転換が自分のチームと臨床の業務理念に最大の意義をもつタイミングはいつかということが個々の歯科医師の疑問に思う点である。 本論文では、口腔内スキャニングシステムを用いたデジタル印象採得の利点とその限界を概説し、決断の際の価値ある一助になることを目的とするものである。また、この分野における革新的活動の隆盛を示した最近のInternational Dental Show(IDS)において展示されたすべての口腔内スキャナーに関する最新の概説を提供する。口腔内スキャンシステムの優位性 石膏模型を製作していた従来の印象採得法に比較して、デジタル口腔内スキャンとそれに続くデジタルデータの構築は多大な利点をもたらす。それを以下に記す。リアルタイムの可視化 コンピューターモニター上でのデジタル模型の早期の品質分析は、スキャン中またはスキャン直後でも行える。従来の印象採得法では、重要な細部のディテールは石膏模型を製作してはじめて明らかになっていた。再印象が容易 スキャンの結果が満足いかない場合でも簡単にすぐに再度スキャンできる。再度、印象用トレーの準備や印象材を練和する必要はない。選択した部分を繰り返しスキャン可能 従来の印象採得法と対照的に、再スキャンは選択的に支障のある部位一部分だけに限ることができる(たとえば、形成マージン部の出血など)。この際には、支障のある部位のみをデジタルで切り取って再スキャンを行うだけである。関連部位の選択的取り込み スキャンによって必須部位は先に記録される。これは大きなフルマウスのリハビリテーション症例であっても、部分ごとに数回の治療処置に分けて進めることができるということである。印象材と印象用トレーの洗浄・滅菌が不要 口腔内スキャナーは簡単に滅菌可能であり、チップはオートクレーブ対応のものもある。代替案としては使い捨てのビニール製保護スリーブの使用が挙げられるが、それもスキャン終了後にはもはや必要ない。これで、時間のかかる印象用トレーの洗浄・滅菌の段階を割愛することができる。支台歯形成/修復の分析用オプション デジタル模型を使い、コンピューター画面上で重要な支台歯形成のパラメーターである挿入方向、対合歯との距離といったものを直接チェック可能である。同様に修復の要因(たとえば、最小壁厚、形態的・機能的に適切な修復物設計)もデジタル模型で確認できる。模型の摩耗がない 修復物の適合性を模型上で試適するときに生じがちな摩耗が、デジタル模型では起きない。デジタル模型はつねに本来の品質が守られ、すぐに使用可能である。瞬時に使用でき他者と共有可能 時間をかけることなくデジタル模型の処理が行える。クラウドシステムを利用したデジタルデータの転送により通信コストの削減もできる。長期保存性 従来法で製作された模型と違い、デジタル模型は場所を取らないので、容易にまた効果的な保存が可能である。さらに、患者の記録ファイルにアクセスして簡単に取り出すことができる。使用材料の削減 デジタル印象採得は廃棄物を削減し、サステナビリティ(持続可能性)と資源保護の観点から有利である。チェアサイドでのオプション 時間短縮だけでなく、1回の受診で、損傷した象牙質に対する即時の細菌侵入防止目的の封鎖を可能にし、それによる残存硬歯質の接着安定化が望める、といっ41

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