小児歯科デンタルホームYEARBOOK2016
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155Part3 専門医,かかりつけ歯科医の実践例から学ぶ別冊 the Quintessence小児歯科・デンタルホームYEARBOOK 2016子どもたちに聞いてみても,今まで他の歯科医院で定期健診を受けていたというケースがかなり多くなってきた.定期健診の質が医院によって差があることは当然だが,歯科の定期健診を受けるという意識のある家庭の子どもで永久歯にう蝕ができる可能性はかなり低い.これは,「う蝕予防のためにどういった生活習慣が大切か」という知識が一般に広まったためと考えられる. 日本学校歯科医会や厚生労働省の歯科疾患実態調査のデータでも,12歳児のDMFT値は減少傾向で,歯科先進国と肩を並べるレベルまでになっており,われわれがあまり神経質にならなくてもう蝕予防はできている.しかし一方で,小窩裂溝直下に進行するHidden Caries(図2a,b)や隣接面から進行する Contact Caries(図3a,b)などは,集団検診で見逃されていることが多く,かかりつけ医でしっかりとした診査が行われなければ見つからない.社会にフッ素配合歯磨剤が普及した結果,エナメル質が強化され,その効果が及ばない不潔域でう蝕が進行してしまう現象と考えられる.子どもたちをみるかかりつけ医は,集団検診の結果や見た目の美しさに惑わされず,臼歯部小窩裂溝と隣接面を注意して診ていかなければならない.定期健診に通わせているにもかかわらず,う蝕を見逃してしまっては患者との図1う蝕予防は完全だが正中のズレや逆被蓋のある患者図2咬合面小窩裂溝のHidden caries図3隣接面のContact caries図1a~c 13歳,男児.歯列を診てほしいということで初診来院した.今まで他院で定期健診を受けており,う蝕予防は完全にできている.しかし歯列・咬合は乱れており,正中は左にズレ,左側犬歯は逆被蓋になっている.右側への側方運動が制限されて左噛み傾向が出てきている.永久歯への交換期に対応すべきだった症例であり,今からかかりつけ医で改善することは難しい.図2a,b 咬合面小窩裂溝のHidden car-ies.集団健診では見逃されるが,診療室ではしっかりとした診査を行い対応していかなければならない.図3a,b 隣接面のContact caries.₄遠心に大きなう蝕があり,定期的なエックス線診査を行わなければ見逃してしまう.aaabbbc

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