小児歯科デンタルホームYEARBOOK2016
5/6

154別冊 the Quintessence小児歯科・デンタルホームYEARBOOK 2016はじめに 歯科界によるう蝕予防の取り組みはこの30年で大きな成果を上げ,12歳児のDMFT値は世界の歯科先進国と同等の数字となっている.いろいろな要因が考えられるが,ほとんどの開業医が積極的に取り組んできたことも一因であろう.筆者が学校歯科医として携わっている地域の小学校の歯科健診においても,う蝕のある子どもはほとんどいない.それとは対照的に,多くのう蝕を抱える子どもが少数いて,口腔内の健康格差がかなりはっきりしている.この少数の子どもたちに対しては,歯科的なアプローチというよりも学校あるいは行政からの生活指導や保健指導が必要であり,わが国が抱える格差社会の歪みとして対応すべき問題であろう. う蝕予防が社会に浸透する一方で,歯列に関する認識も次第に高まっている.小さい頃から他の医院に定期健診に通っていてう蝕の予防は完全にできているのに,歯列に異常を抱えて相談にみえる子どもたちがいる(図1a~c).乳歯列から永久歯列への交換期にわずかな修正を加えていれば,このような口腔内にはならなかったのではないかと思われるケースが多い.定期健診に子どもを通わせる親からすれば,う蝕予防とともにきれいな歯列になってほしいという想いがあったはずである.このようなことが起こる1つの原因は,歯列に関する専門医として矯正歯科医が存在することから,歯列の管理に取り組むかかりつけ医が少ないことが考えられる.もう1つは,歯列にかかわる治療費に保険がきかないという社会保障制度の問題である.国家の制度について云々しても仕方のないことだが,う蝕予防のように歯列の管理についても多くのかかりつけ医が取り組むようにならなければ,健全な歯列を獲得する子どもは多くならない.う蝕予防の落とし穴 子どもたちが歯科の定期健診を受けるということは,国民の間でかなり浸透してきた.初診来院する2私が考える“かかりつけ歯科医”としての小児歯科とは2.子どもたちを健全歯列に導くには須貝昭弘神奈川県開業 須貝歯科医院連絡先:〒212‐0016 神奈川県川崎市幸区南幸町2‐8‐1 オーベル川崎101Akihiro SugaiTo Guide Children in a Healty Dentition

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 5

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です