小児歯科デンタルホームYEARBOOK2016
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13Part1 一生にわたって国民の健康を守るために重要な小児期別冊 the Quintessence小児歯科・デンタルホームYEARBOOK 2016 すなわち,小児歯科を標榜する歯科医師の基本的な姿勢は,「予測的見地に立って社会的背景を加味した小児期の健康な歯・歯列・咬合・口腔軟組織の育成に関する継続的な支援を通して,口腔領域の良好な機能性と審美性を達成し,より良い人生を送るための支援につなげていく」ことにあると言える.図1上顎右側犬歯の萌出方向異常による中切歯の歯根吸収状態 (13歳女子)図1 他の側方歯群の萌出状況を見れば,学校健診の担当歯科医やかかりつけ歯科医は,エックス線検査を行わなくても,数年前にさかのぼってこの種の顎骨内の異常()を察知できていたはずである.3.小児歯科を標榜するのなら,子どもたちが歯科診療に適応していけるように工夫し,成長過程で起こり得る口腔のさまざまな障害状況に対応できるように,高い見識に基づいた観察能力を養い,高度な治療技術に習熟しておきたい.4.う蝕や歯周疾患,口腔外傷などの単なる疾患対応型の医療提供に留まるのではなく,個々の子どもたちが持つ口腔の形態と機能,習慣,発達状態,社会的環境などの諸条件を加味して,多方面から対応策を考えたい.5.成長の時間軸の下で問題点を予測して目標を設定し,継続的なアプローチを図るタイミングを見計らい,その時点ごとにもっとも適切と判断される対応策を長期にわたって段階的に提供していきたい.6.将来的により良い口腔の育成状況に導いていくためには,長期的な管理を通して,いつ,どのような対応をどのくらいの期間積み重ねていくかの計画について,常に考えておきたい.7.通常の歯科治療に加え,個別医療と社会歯科学的な観点が入り交じった複眼的視野を持ち,地域社会における障害児・者施設や小児病院,訪問看護ネットワークとの連携,あるいは児童虐待の疑いへの対応など,子どもたちの総合診療医として,小児医療の関連職種や保健機関との連携活動の一員となって問題解決への道筋を俯瞰し,子どもたちをより良い方向へ導くコーディネーターの役割を担いたい.

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