小児歯科デンタルホームYEARBOOK2016
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12別冊 the Quintessence小児歯科・デンタルホームYEARBOOK 2016はじめに お子さんの歯科医療を担当するかかりつけ歯科医としての守備範囲は,どこまでとお考えだろうか.「子どものう蝕や歯肉炎,口腔外傷などが,小児歯科標榜医の対応すべき歯科疾患や病態である!」と,歯科医師自身が思い込んでいないだろうか? かかりつけ歯科医として,子どもの診療に取り組む場合,単に目に見える歯科疾患に対処することだけがその役割ではない.口腔軟組織や上下顎骨の内部で発生している,あるいはまだ疾病状態に至っていないが,問題の発生が推測される状況を事前に察知する洞察力を磨き,異常の兆候を見逃さないことが大きな責務である. さらに言えば,口腔領域の疾病に向かおうとしている背景や過程にも目を向け,事態が深刻になる前に,子どもたちの養育環境を含めて改善への方向性を示すことも重要な役割と言える.小児歯科を標榜する歯科医師に望まれる基本姿勢とは? それでは,子どもを診る歯科医師は,どのような意識を持って,日々の診療にあたるべきなのだろうか? その要点を記すと,以下のようになる.1日本おける小児歯科の現状日本における小児歯科の現状と展望─ かかりつけ歯科医における小児歯科の今後のあり方 ─山﨑要一一般社団法人日本小児歯科学会 理事長鹿児島大学大学院小児歯科学分野 教授連絡先:〒890‐8544 鹿児島県鹿児島市桜ヶ丘8‐35‐1Youichi YamasakiCurrent State and Perspective of Pediatric Dentistry in Japan1.子どもにとって,生涯で初めて受診する歯科医院での経験は,その後の継続的な歯科受診の動向に大きく影響する.このため,まず何よりも最初に意識すべきことは,歯科医院で子どもたちが歯医者嫌いならないように,さまざまな対応法を備えておきたい.2.成長期間にわたって子どもたちや親御さんと向き合い,口腔を通した日々の健康増進のための伴走者でありたい.ご自身の得意とする治療域へ患者を引き入れることに医療提供の価値観を置くのではなく,子どもたちを取り巻く全方向的な視点から,歯科領域の長期管理を考えたい.

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