オーラル・インプラント・リハビリテーション・シリーズ Vol.2
7/8

5.1 インプラント補綴の上部構造の材料5.1.1長期的観点から見たインプラント補綴の上部構造の材料 現在、上部構造製作において選択できる材料は、その種類や材質においてかなりの進歩を得た。また製作方法に関してもCAD/CAMテクノロジーの進歩などにより、安定した品質でより丈夫に、そして適合精度も向上した上部構造を製作することが可能となった。しかしながら、それらすべては人工物である以上、材質の特性に応じた長所・短所も存在するのが現実である。 よって、われわれ歯科医師に求められるものは、それぞれの材質の特性を良く熟知し、また症例の特徴を理解したうえで、最善の材料を組み合わせ使用していくことであり、それこそが長期的観点からみた上部構造のために必要であると考える(図5.1.1)。5.1.2インプラント補綴の上部構造の構成 クロスアーチの上部構造を構成する材料は、金属系または非金属系フレーム、およびその上を覆う歯冠色または歯肉色の材料に大別される。それぞれに用いる材料は一般の歯冠修復材料であるが、インプラント補綴特有の概念もあるため、その選択には配慮が求められる。特にインプラント補綴の上部構造は、インプラント治療特有の欠点である歯根膜を介在した緩衝作用がなく、また粘膜負担でないため、咬合力が上部構造ならびにそれらを介してフィクスチャーに直接負担がかかる点に留意して材料を選択する必要がある。5.1.2.1 歯冠部および歯肉部(ガム)材料(a)人工歯 (denture teeth)(図5.1.2) いわゆる人工歯は、従来の義歯製作においても広く用いられており、上部構造製作においても同様に歯冠部材料として用いられる。人工歯を用いるメリットとしては、義歯製作と同様、操作性が良く、修理も簡便であり、安価に抑えられるといった点がある。 反面、歯根膜ならびに粘膜負担の欠如から、同じ義歯材料であっても総義歯とは大きく異なり、人工歯の脱落や破折をともなうケースも多い。修理は簡便ではあるが、人工歯のトラブルは患者の求めるものとは異なるものであり、選択する際には十分な説明が求められる。(b)アクリリックレジン (acrylic resin)  歯科では義歯床用の素材として従来から使用されているアクリリックレジンは、上部構造製作においても、人工歯を歯冠材料に使用する場合の歯肉(ガム)部材料とし図5.1.1 それぞれに用いる材料の特性を熟知し、最善の選択をすることが長期的観点からみた上部構造には求められる。新井聖範、長谷川 孝、庄野太一郎歯肉部材料フレーム材料歯冠部材料上部構造5章 長期的観点から見たインプラント補綴の上部構造の材料、設計および装着方法86Oral Implant Rehabilitation Series

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です