抜歯・小手術・顎関節症・粘膜疾患の迷信と真実
4/6

抜歯小手術顎関節症・咬み合わせ粘膜疾患口腔顔面痛・診断全身疾患との関連21Mettesらの無症状の埋伏智歯の予防的抜歯についてのコクランレビュー(文献6)参考文献1.SIGN:Management of Unerupted and Impacted Third Molar Teeth. Quick Reference Guide. A National Clinical Guideline, SIGN(Scottish Intercollege Guideline Network)Publication No. 43, 2000 http://www.sign.ac.uk/pdf/qrg43.pdf(2015年6月30日アクセス) 現在はこのQuick Reference Guideのみ参照可能。2.NHS:Interim Clinical Commissioning Policy:Removal of Third Molar Teeth(Wisdom Teeth)NHS England 2013 http://www.england.nhs.uk/wp-content/uploads/2013/11/N-SC036.pdf#search='Management+of+Impacted+Third+Molar+Teeth+british'(2015年6月30日アクセス)3.NICE1:Guidance on the Extraction of Wisdom Teeth. National Institute for Health and Care Excellence(NIEC), UK 2000 http://www.nice.org.uk/Guidance/TA1 (2015年6月30日アクセス)4.AAOM:The Management of Impacted Third Molar Teeth Clinical Paper – The American Association of Oral and Maxillofacial, 2013 5.NICE2:McArdle LW, Renton T. The eects of NICE guidelines on the management of third molar teeth. Br Dent J 2012 Sep;213(5):E8. 6.Mettes TD, Ghaeminia H, Nienhuijs ME, Perry J, van der Sanden WJ, Plasschaert A. Surgical removal versus retention for the management of asymptomatic impacted wisdom teeth. Cochrane Database Syst Rev 2012 Jun 13;6:CD003879.【研究の目的】 青年期と成人の無症状の埋伏智歯に対する予防的抜歯の効果について、保存的方法と比較検討する。【研究デザイン】 システマティックレビュー【論文選択】 無症状の埋伏智歯に対する予防的抜歯のランダム化比較試験はなかった。他のアウトカムのランダム化比較試験の論文を1つ利用した。【研究対象者】 青年期の埋伏智歯。【介入方法】 埋伏智歯抜歯【対照】 青年期の埋伏智歯の非抜歯症例。【観察期間】 5年間【評価方法】 下顎切歯の叢生(レビューの当初の目的に対するアウトカムではない論文しか存在しなかったため)。【主な結果】 埋伏智歯の非抜歯症例と抜歯症例の間に、下顎切歯の叢生の発生に関する差はなかった。【結論】 両者に差はなかった。また、他の関連するアウトカムも見出せなかった。表1-4-1 スコットランドの未萌出智歯と完全埋伏智歯の取り扱いに関するガイドライン(文献1より引用改変)1)抜歯を推奨しないもの・萌出して機能的な役割を果たしているもの(B)・深い埋伏で局所、全身的に明らかに病的な既往がないもの(B)2)抜歯を推奨するもの・智歯を残しておくことによって、その後の抜歯で合併症をきたしやすい全身的な状態を有する患者(放射線治療や心臓外科手術前の患者)(C)3)抜歯を強く推奨するもの・う蝕をきたして修復が容易でない智歯や、智歯を抜歯しなくては治療が困難な第二大臼歯のう蝕がある場合(B)・智歯、第二大臼歯に歯周炎をきたしている場合(B)・歯原性嚢胞やその他病変に関連のある智歯(B)・骨吸収の原因となっている智歯または智歯により影響を受けている第二大臼歯がある場合(B)※AはエビデンスレベルIa、Ib、BはエビデンスレベルⅡa、Ⅱb、Ⅲ、CはエビデンスレベルⅣに相当する(GRADEアプローチではない旧式の分類)。 ランダム化比較試験の実施が容易ではない典型的な例である。治療の患者にとって重大なアウトカムをどこにおくか、適切な観察期間はどれくらいか、観察期間中に重症感染をきたしたり、矯正治療が必要になった場合にそのあとの治療を補償できるかなど、研究をデザインするうえで検討すべき点が多い。成人の無症状の埋伏智歯に対しては注意深い定期的な観察がより賢い選択かもしれない(放置ではない、英国では、NICEの診療ガイドライン後、う蝕が増加したとの報告もある5)。ただし、筆者の経験では、若年者のほうが抜歯が容易であるので、できれば若年のうちに抜歯したい。エビデンスからいえること・わかること バイアスのリスクが高く、想定していた患者にとって重大でないアウトカム(代替のアウトカム)を設定したランダム化比較試験がわずかに1つのみであった。エビデンスの確信性の程度は、きわめて低い。参考:エビデンスの確信性の程度

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です