臨床家のための矯正 YEARBOOK 2015
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010臨床家のための矯正YEARBOOK 2015はじめに アレキサンダーディシプリン1,2において,成長期の上顎前突に対してリトラクター,いわゆるヘッドギアを用いた第一期治療が有効であるとされている. そこで今回,アレキサンダーディシプリンに基づいて,成長期に第一期治療を行ったⅡ級のLow angle症例とHigh angle症例の長期術後経過からそれぞれの第一期治療の意義を考察した.症例1初診時年齢:10歳11か月,女児.主訴:口元の突出感.初診時所見:全身所見としては,猫背姿勢,口唇閉鎖困難,習慣的な口呼吸が認められた.正貌では口唇閉鎖時にオトガイ部の緊張と下口唇の翻転が認められ,側貌は上口唇の突出とともにオトガイ部の後退感を示すコンベックスタイプであった.口腔内所見としては,すべての歯の大きさは標準値±1S.D.の範囲内で,Overjetは7mm,Overbiteは0.5mm,大臼歯関係は左右側ともにEnd onのClassⅡを示した.上顎においては標準的な歯槽基底弓幅径に対して歯列弓幅径は標準より1S.D.狭窄していた.₂の先天欠如ならびに₃が₅の頬側に移転していた.骨格系ではFMA 21.5°,ANB 6.5°の,典型的なLow angle Class II div 1不正咬合の骨格を呈した(図1a, 2a, 3a, 4, 5a, b, 表1).診断:₃の移転と₂の先天欠如ならびに上顎歯列の狭窄をともなうLow angle Class II div.1.治療計画:まず,第一期治療で顎外固定装置を用いてOverjetを含むⅡ級の歯系ならびに骨格系の改善を行うことにした.なお,第一期治療中に上顎における2×4のシステム(0.018 アレキサンダーブラケット)に加えて,移転した₃の配列も行うこととした.第二期治療では非抜歯で全体的な咬合の改善を行うこととした.治療開始に先立ち,口腔周囲の悪習癖改善のための患者啓発も行うこととした.治療経過:①サービカルプルヘッドギアを患者は協力的に使用し(1日8時間以上の装着),第一期治療は2年1か月で終了した(図2b~e).②上下顎歯列のレベリングが進み,非抜歯にて第二期治療を進めた(図2e).なお,患者ならびに紹介医の希望もあり,先天欠如であった₂の空隙を確保し,成人後に欠損補綴を行う予定とした.③第二期治療は1年半であった(図1b, 2f, 3b).④保定装置は上顎にwraparound type,下顎には3×3 xed typeを用いた(症例2も同様).治療結果:保定開始時においてSNAが84.5°から83.5°に減少したほか,SNBが78°から79°に増加,ANBが6.5°から4.5°,Witsは4.4mmから2.5mm,そしてIMPAは99°から97°に改善した.また,End on ClassⅡの大臼歯関係がⅠ級に改善したとともに[アレキサンダー研究会]「成長期における上顎前突」の長期術後経過から考える第一期治療の意義Significance of the Early Orthodontic Treatment in "the Maxillary Protrusion Cases " Considered from the Long-term Retention After TreatmentHaruya Ogawa広島県開業 小川矯正歯科連絡先:〒720‐0062 広島県福山市伏見町4‐32小川晴也特集 成長期の上顎前突を極める 第Ⅰ部 スタディグループによる症例提示

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