埋伏歯 impacted teeth
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40上顎犬歯の唇側への埋伏2適切な外科的開窓術を選択するためには,次の4つの基準について評価する必要がある13.1埋伏している犬歯歯冠の唇舌的位置犬歯が唇側に埋伏している場合は,歯肉切除術,APF,閉鎖誘導法のいずれも適用の可能性がある.一般に埋伏した犬歯の歯冠を被覆する骨は,たとえあったとしてもわずかだからである.ただし,歯が歯槽堤の中央に埋伏しているようであれば,歯冠唇側面を露出させようとしたときに広範な骨の除去が必要になってしまうため,歯肉切除術やAPFは適応外となる. 2歯肉歯槽粘膜境と比較したときの,埋伏している犬歯歯冠の垂直的位置埋伏している犬歯歯冠の大部分が歯肉歯槽粘膜境より下方にあるようなら(31ページ図2-1),歯肉切除術,APF,閉鎖誘導法のいずれでも応用可能である.しかし歯肉歯槽粘膜境より上方に位置するようであれば(33ページ図2-2,36ページ図2-3),誘導後に犬歯の唇側面を覆う歯肉が不足をきたしてしまうため,歯肉切除術は適応外となる.加えて埋伏した犬歯が歯肉歯槽粘膜境のはるか上方にあるようなら(44ページ図2-6,51ページ図2-8,60ページ図2-11,63ページ図2-12),APFもまた適応から外れることになる.これは,APFだと歯の位置の安定性に問題があり,矯正歯科治療終了後に歯が再度沈み込んでしまう可能性が生じるからである7.この場合は,閉鎖誘導法を用いることで歯冠を覆う十分量の歯肉が残せることになり,長期的な歯の沈み込みの問題は生じない8.3埋伏犬歯部の歯肉の量埋伏した犬歯部に十分な量の歯肉がない場合(図2-3),予測性をもってより多くの歯肉を確保できる方法はAPFのみとなる.しかし,誘導後の段階で少なくとも2~3mmの付着歯肉が確保できる見通しをもてるだけの十分な歯肉があるようなら,歯肉切除術,APF,閉鎖誘導法のいずれにも適用の可能性が出てくる.4埋伏している犬歯歯冠の近遠心的位置犬歯の歯冠が近心位にあって側切歯の歯根と重なっている場合は(図2-2,2-6,57ページ図2-10,2-12),APFを用いて歯冠を完全に露出させない限り,歯槽内での歯の移動は困難である.このような場合,歯肉切除術や閉鎖誘導法は一般に適さない.犬歯に位置異常がみられるような場合(すなわち側切歯より近心にある,あるいは第一小臼歯より遠心にある場合)はAPFを用いるべきである.埋伏した犬歯の誘導では,側切歯や第一小臼歯に損傷を加えることなく乗り越えさせなければならず,そのために適したメカニクスを講じることが必要になる.その際にAPFを用いることで,矯正歯科医はアプローチが容易になり,適したメカニクスを講じやすくなる.唇側への埋伏例の中には,歯槽堤の中央部にかなり近いところに位置するようなものもみられ,その場合は閉鎖誘導法による治療が行われる.こうした位置にある歯は最もアプローチが容易であり,チェーンを歯に直接接着し,歯槽頂部から歯を誘導することが可能である.これは,正常な萌出様式に則った移動形態である(図2-5).開窓術の選択基準

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