考えるエンドドンティクス
1/6

012Part 1a.定石を学び成功のイメージをもつ 「知識」と「技術」は学ばなければ上達しません1.学ばない歯科医師は伸びません.根管治療の腕を上げるには,先輩や指導医に相談する,本を読む,勉強会やハンズオン・セミナーに参加する,ことが従来から行われています.どれも有効な手段です.個人的には,日本では歯内療法を適切に指導してくれる歯科医師が少ないように思います.先輩や指導医が根管治療の理論を知らずに我流の根管治療を行っていれば,我流の方法が拡大再生産されていきます. 短期間で歯内療法の腕を上げようとすれば,歯内療法の「定石」を学び,歯種ごとの根管と歯髄腔をイメージしながら治療技術を高めることが有効です.具体的には,根管治療に必要な理論を勉強して,透明根管模型や抜去歯で実際に根管の拡大形成を繰り返し練習します.歯種ごとの根管の特徴を学ぶ必要があるので,最低でも歯種ごとに10本程度の練習は必要です.抜去歯で適切な根管形成ができなければ,実際の臨床でも適切な根管治療はできません.根管形成の練習をして失敗した抜去歯があれば,その都度振り返って失敗の原因を追及しておけば確実に失敗が減ります.自分の頭と手の感覚が連動するまで練習すれば一応修了です. 「初めに終わりのことを考えよ」とは,レオナルド・ダ・ヴィンチの言葉です.根管治療においても治療前に治療のゴールをイメージできることが理想です.筆者は知り合いの先生から,新人の歯科医師に診療をさせる前に,抜去した大臼歯の根管治療を3日間で100本練習させるという話を聞いたことがあります.野球の「千本ノック」は知っていますが,「100本エンド」は初耳でした.根管充填した歯をエックス線写真で確認し,歯牙を削って自分の行った根管充填の評価を繰り返して修正を加えていけば,根管の内壁にレッジを形成しないで根管を拡大形成する感覚(触覚)が身につくでしょう.根尖孔を壊さないでアピカルシートを形成することが可能になります.再帰ファイリングすると切削片が根尖孔から少量押し出されることもわかります.ファイリング運動では,切削片が根管に詰まりやすいことや根尖孔から押し出す切削片が多いこともわかります.自分の目で直接みて根管治療のイメージをもち,練習を通じて技術を磨くことが上達の近道です. 「触覚」は歯内療法を行ううえで非常に重要な「感覚」ですが,言葉で伝えるのは容易ではありません.しかし,抜去歯や透明模型(図3-1)を使用した練習を通して追試することが可能です.抜去歯を使って根管形成と根管充填をしてエックス線写真で確認し,実際に抜去歯をバーで削ってみて自分が形成した根管の内壁を観察してみれば,根管形成のイメージをもつことができるでしょう2. 根管の三次元的な形態を直接目でみることはできませんが,CTやマイクロCTを利用すれば,根管の拡大形成が視覚的に理解でき(図3-2, 3),根管の内壁に器具を接触させて削合できたかを解析できるようになりました.b.抜去歯で練習することの意義 前述したように患者の患歯を治療する前に抜去歯を使って根管の拡大形成の練習を繰り返し,歯根の形態を観察することは根管治療のイメージを身につけるために,No.3根管治療の腕を上げる法則図3-1a, b 下顎犬歯の透明模型.透明模型を使用することで「触覚」を追試することが可能である(平井歯科 平井 順先生のご厚意による).ab

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です