インプラント デンティストリー エンサイクロペディア
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イーピーティーエフイーexpanded polyterafl uoroethylene (ePTFE)定義:PTFEはテトラフルオロエチレンの重合体であるフッ素樹脂で、テフロン® (Tefl on®)の商品名で知られている。ePTFEはPTFEを延伸加工したものであり、強度と柔軟性を有した微多孔性の素材で、医療のみならず工業分野においても広く利用されている。 医療分野では、チューブ上に加工した人工血管として、シート状のものは心臓修復用パッチ、心膜シート、人工硬膜などに、さらに手術用縫合糸として応用されている。歴史:歯科領域においては、1986年に失われた歯周組織の再生を目的としたGTR(guided tissue regeneration)のための遮断膜として初めてGoreTex社からePTFE膜が商品化された。その後の研究から、GTRと同様の概念に基づいて骨の再生も可能なことが明らかとされ、1980年代末にはePTFE膜を用いてのGBR(guided bone regeneration)が臨床応用されるようになった(図1~3)。臨床的意義:元来、インプラントは確実なオッセオインテグレーションを得るためには、骨内に埋入することが必須であった。GBRによる骨の再生のオプションが増えたことで、咬合や審美的要件を満たすような理想的な位置にインプラントを埋入することが可能となり、適応症の拡大につながった。ePTFE膜がGBRの臨床応用の先鞭をつけ、インプラント治療の発展において果たした役割は大きい。問題点:ePTFEはGBRに用いる遮断膜の用件として、生体適合性、細胞の遮断、スペースメイキングにはきわめて優れた性質を有している。しかしながら、欠点としてGBRの術後早期にePTFE膜が露出、感染した場合に骨再生が十分に得られないことが挙げられている。またePTFEは非吸収性であることから、除去のための手術が必要なことも欠点とされるが、インプラント治療においてはインプラント体埋入、もしくはアバットメント連結の手術時にePTFE膜の除去が可能なため、この点はGTRに比較してさほど問題とならない。(※ePTFE膜は2012年3月をもって販売が終了し、現在はePTFEの縫合糸しか入手できない。)同義語⇔ ゴアテックスメンブレン図1 インプラント埋入時に骨の裂開を認める。図2 ePTFE膜を用いてのGBR。図3 骨の再生が認められる。異種移植片xenograft 異種骨としては、ウシの焼成骨が代表的であり、広く応用されている。異種骨は化学処理で完全にタンパク質を除去することが可能となっており、天然のハイドロオキシアパタイトとして使用されている。気孔率や微細構造がヒトの海面骨と類似しており、骨伝導能に優れ、ヒトの骨内で吸収されずにこの材料を取り囲むように骨が新生するため、骨の容積維持が可能である。一部の製品では歯周病による骨欠損の治療に、厚生労働省の認可のもと、臨床応用されている。萎縮粘膜atrophic mucosa 体外に開口する体腔の内面を覆う上皮が細胞の歯とその後の再吸収、細胞粘膜の減退、圧迫、虚血、栄養不良、機能低下、ホルモン変化などにより、組織サイズが縮小または減少すること。移植骨受容部(被移植床)recipient site 自家骨を含む移植材料により移植を行う骨の部位。自家骨移植の場合、表層の一部の細胞を除き細胞成分は死滅する。そのため移植骨は、いったん吸収してしまう。その後、移植母床からの新生血管の進入と骨芽細胞の分化によって宿主骨に置換される。移植材料graft 歯槽骨が欠損している場合では、通常の方法でインプラントを埋入することは困難であり、こうした場合には歯槽骨の再建が広く行われている。この再建には移植材料が必須であり、従来から自家骨、他家骨、人工骨などが用いられてきた。 自家骨による再建では、自己の骨採取部位を必要とし、大きな侵襲は不可避である。特に骨欠損が大きな症例に対しては血管柄付骨弁を用いる必要があり、その場合、微小血管吻合が必要なばかりでなく移植部位に適した骨形態の造形が必要であり、いずれも熟練した手技が求められる。 他家骨に関しては、感染症の問題や倫理上の問題から、わが国においては普及していない。また、異種骨としてはウシの焼成骨が用いられており、天然のハイドロオキシアパタイト(HA)として使用されている。 また、代用骨も臨床的に広く応用されており、HAや、α,β-TCP (リン酸三カルシウム;tricalcium phosphate)など多数のものが開発されてきた。こうした代用骨の要件としては、①操作性が良いこと②欠損部によく適合した形状をとること③支持性を有すること④骨再生誘導能を有することなどが挙げられる。しかし、すべての要件が満たされた人工骨はいまだ開発されていない。人工骨にはHAはリン酸カルシウム系のバイオマテリアルで、組成が人間の骨の成分に近いため生体親和性が148いイーピーティーエフイー

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