GDS 総義歯の真髄
5/6

248Chapter5Chapter5-2人工歯排列の実際―長期的な予後安定を求めた人工歯排列を目的に―はじめに Chapter5-1までで人工歯排列の準備は終了した。さて、当然のことながら「義歯」は「口腔内で機能している歯」であり、人工臓器である。そして、人工歯排列は総義歯が口腔内で機能できるか否かを決定する事項であるので重要である。 本項では、基準をもち、再現性のある(科学された)人工歯排列について述べてみたい。1.上下顎前歯部人工歯排列 筆者は、総義歯治療は硬質な物質を用いて行う非体内埋入式人工臓器の「移植治療」であると考えており、そのためChapter5-1および本項で述べる各歯が本来もつ役割を考えて排列していくことが重要であると考えている。 人工歯排列は上下顎前歯部から開始していくが、前歯部全体での役割を考察すると、大きくは次の3つが挙げられると考える。①顔貌における印象を大きく左右する審美的要素。②発音。③狭義の意味でのアンテリアガイダンスを司り、側方運動時の臼歯部における上下顎機能咬頭内斜面同士の干渉により、咬合支持咬頭である機能咬頭が摩滅してしまうことを防止し、経時的に咬合高径が低くなることを防止する。 これらのうち、①は主に形態や色と相関する事項、②・③は人工歯排列や歯肉形成と相関すると思われる。中でも③は重要な事項であり、犬歯などの側方歯群で側方運動時に下顎運動と調和した咬合誘導が確立されていないと、臼歯部の機能咬頭内斜面

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です