TMD YEARBOOK 2014
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11DC/TMD論文を読む前に――DC/TMDの概要と本翻訳文の位置づけ別冊the Quintessence 「TMD YEARBOOK 2014」 DC/TMD論文は研究論文としてまとめられているため,一般臨床医にとってはたいへん難解である.そのため,今回の翻訳に際しては可及的に内容を変えない範囲で意訳し,論文の概要を紹介することを目的とした.本翻訳文の位置づけ†RDC/TMD:RDC/TMD(Research Diagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders)は,1992年に公表された研究用のTMD診断基準である. RDC/TMDは,生物心理社会的モデル(bio-psychosocial model)に基づく2軸診断システムを特徴としている.すなわち,第Ⅰ軸(AxisⅠ)で身体的な評価,第Ⅱ軸(Axis Ⅱ)で心理社会的な評価を行う.用意されている詳細なプロトコールにしたがって診察することで,共通の診断基準に基づく被験者集団が得られ,これによって研究者間で研究データの比較が可能となる. このようなことから,RDC/TMDは医学生物学領域でもっとも頻繁に引用されているいわゆる世界標準のTMDの診断基準とされ,近年のTMD研究の発展に大いに貢献してきた.なお,2001年から行われた妥当性検討プロジェクト3,4の結果,RDC/TMDの改訂が行われ,2008年に改訂RDC/TMDが公表された. 原文については国際RDC/TMDコンソーシアムネットワーク‡のウェブサイト(http://www.rdc-tmdinternational.org/TMDAssessmentDiagnosis/DCTMD.aspx)からもダウンロードできるので,参照していただきたい.なお,本稿で紹介している日本語訳はあくまでも暫定案であり,正式には現在,矢谷博文教授(大阪大学)が作成中の正規日本語版DC/TMDを参照していただきたい. また,DC/TMDの運用にあたっては,いわゆる「マイスター制度」が準備されており,トレーニング拠点等で一定のトレーニングを受けたうえでDC/TMDを実施する必要がある.したがって,日本語を解する患者および被験者を対象にDC/TMDを実施するためには,正規日本語版DC/TMDの公表後に,それを用いたトレーニングを受けたうえで,マニュアルどおりに実施する必要がある.なお,今後,一般社団法人日本顎関節学会のサポートを受けて,国内トレーニング拠点の設置およびトレーナーの養成が行われる予定である.理社会学的評価)を有する.厳密に規格化・標準化された詳細なプロトコールにしたがってDC/TMDを実施することで,もっとも頻度の高いTMDについて,信頼性と妥当性が検証された診断基準に基づいて診断することができる.今後は,RDC/TMDに替わってDC/TMDが世界標準のTMD診断基準となるものと思われる. なお,DC/TMD開発の経緯,その内容,意義,今後の展望等については,翻訳文を参照していただきたい.また,本章の最後にDC/TMDの解説を記載しているので,併せて参考にしていただきたい.参考文献1. Schiffman E, Ohrbach R, Truelove E, Look J, Anderson G, Goulet JP, List T, Svensson P, Gonzalez Y, Lobbezoo F, Michelotti A, Brooks SL, Ceusters W, Drangsholt M, Ettlin D, Gaul C, Goldberg LJ, Haythornthwaite JA, Hollender L, Jensen R, John MT, De Laat A, de Leeuw R, Maixner W, van der Meulen M, Murray GM, Nixdorf DR, Palla S, Petersson A, Pionchon P, Smith B, Visscher CM, Zakrzewska J, Dworkin SF; International RDC/TMD Consortium Network, International association for Dental Research; Orofacial Pain Special Interest Group, International Association for the Study of Pain. Diagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders (DC/TMD) for Clinical and Research Applications: recommendations of the International RDC/TMD Consortium Network and Orofacial Pain Special Interest Group. J Oral Facial Pain Headache 2014;28(1):6‐27.2. Dworkin SF, LeResche L(ed). Research diagnostic criteria for temporomandibular disorders: review, criteria, examinations and specifications, critique. J Craniomandib Disord 1992;6(4):301‐355.3. Look JO, Schiffman EL, Truelove EL, Ahmad M. Reliability and validity of Axis I of the Research Diagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders(RDC/TMD) with proposed revisions. J Oral Rehabil 2010;37(10):744‐759.4. Truelove E, Pan W, Look JO, Mancl LA, Ohrbach RK, Velly AM, Huggins KH, Lenton P, Shiffman EL. The Research Diagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders. III: validity of Axis I diagnoses. J Orofac Pain 2010;24(1):35‐47.

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