3年目からの歯科衛生士臨床
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62ゴール達成に向けたメインテナンス中の評価ポイント2ゴール達成は3年後に評価する1カリエスリスクの高い患者さんがゴールを達成するためには、メインテナンス来院のたびに●歯面の状態の客観的かつ正確な評価●生活習慣の評価をすることが大事です。1歯面の状態の評価歯面の状態は、新しい国際的な標準う蝕診査法「ICDAS」と、日本ヘルスケア歯科学会オリジナルのエックス線写真診査区分「XR」を用いて、それぞれを経時的に比較しながら評価します(ICDASとXRについては134ページ参照)。たとえば初診時に初期う蝕があればICDASでその状態を記録し、メインテナンスのたびにその変化を確認、記録して評価します(図2)。メインテナンス時に新たな初期う蝕が見つかった場合も、ICDASカリエスリスクの高い患者さんのゴールは●新しいう蝕ができない●初期う蝕が進行しない●初期う蝕に再石灰化が見られるです。歯周治療の場合、設定したゴールが達成できたかどうかの判断は治療後3か月で実施する再評価にて行いますが、カリエスリスクの高い患者さんでは、十分に時間をかけて評価しなければ、ゴールが達成できたかどうかわかりません。たとえば、食生活が明らかにう蝕発症に大きな影響を及ぼしていると思われる患者さんに対して、食生活を中心としたカリエスリスク改善のアドバイスをしたとします。再評価時の問診で「食生活に気をつけています」という回答を得たとしても、本当に食生活が改善してう蝕が発症しなくなったかどうかは、再評価の時点ではわからないのです。筆者の経験則になりますが、カリエスリスクの高い患者さんに対しては初期治療後、定期的なメインテナンスを続け、3年以上経過してからようやくゴールを達成したかどうか判断できるのではないかと考えています(図1)。カリエスリスクの高い患者さんへのゴール設定Chapter 10◉図1 カリエスリスクの高い患者さんのゴールで記録します。なお、来院時に初期う蝕部位にプラークが付着している場合は、進行する可能性があるので要注意です。2生活習慣の評価カリエスリスクをコントロールする上で、生活習慣の改善は欠かせないものです。ゆえにメインテナンス中は、食生活、フッ化物応用、プラークコントロールについて必ず評価しなければなりません(図3)。なお生活習慣の改善は、いくらこちらから正しい情報を伝え、改善法をアドバイスしたとしても、多くの場合、すぐに変わることはありません。なぜなら、生活習慣は患者さんの価値観そのものだからです。患者さんが生活習慣を変えようと思い、そして実践するということは、かなりのエネルギーを要することを忘れてはいけません。生活習慣の改善を図る際は、まず患者さんができること・できないことを整理し、できることを確実に実践してもらうことがポイントです。できないことは、なぜできないのか、その理由を聞きましょう。ちょっとした言葉かけで長年の間違った思い込みが解消され、改善につながることもよく経験します。また、できないことを「できない」とはっきり伝えてくれる患者さんに対しては、無理強いせずに、他にできることはないか、一緒に探す姿勢が大切です。新しいう蝕ができない初期う蝕に再石灰化が見られる初期う蝕が進行しない

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