プロフェッショナルデンティストリー STEP5
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Fig.3-11に示した項目は、治療計画を立案する際に欠くことのできない要素である。これらの要素を考慮し、かつエビデンスに基づきながら、歯科医師として自信を持って患者に提示できる治療計画を立案しなければならない。 治療行為は、既成品のごとく患者に提供するものではない。個々の患者の状況により、さまざまなプランを作り上げていくことに意義がある。筆者らはこれを、オーダーメイド医療と呼ぶ。 オーダーメイド医療は、至極当然のことである。その当たりまえのことができるようになるために、われわれは日々技術の向上に励むのである。しかし、ここには落とし穴も存在する。われわれは得てして、スキルの上達とともに難症例に挑戦したくなる傾向がある。つまりスキルの上達は、ややもすると患者不在の医療を展開してしまう危うさを秘めているのである。オーダーメイド医療を志すのであれば、ゴールを「患者にとってベストの治療を行うこと」に設定し、そこに向けて自分のスキルを発揮すべきである。歯科医師としての最高点を目指すのではなく、目の前の患者にとっての最高点を目指す。オーダーメイド医療とはそうあるべきだと筆者は考える。 もちろん、患者にとってのベストな治療が、自分1人では実現できないこともあるだろう。そのような時は、1人で悩み考えるのではなく、補綴を担当する歯科技工士や、メインテナンスを担う歯科衛生士の意見も聞きながら、より広い視野で患者を見つめなおすといいだろう。スタディグループの仲間や、自分のメンターに相談するのもよい。多様性のある患者ニーズに応えるためにも、柔軟性に富んだ治療計画を立案できる環境の構築はとても重要である。 以下、症例を通じてオーダーメイド医療の治療計画について解説したい(Case 3-7~3-10)。Fig.3-11 筆者が考える治療計画を決定する要素【患者について考慮すべき要素】•希望•手術侵襲の程度•経済的制約•全身疾患•社会的立場•口腔衛生管理の協力度•生活背景【歯科医院側で考慮すべき要素】•診断力•技術力(スキル)•患者の将来像•治療の予知性•診療体系(システム)Fig.3-11 患者側・歯科医院側双方の要素を多角的に考慮することにより、最適な治療方法は決定される。Chapter 3LONGEVITY 患者の将来を考慮した歯科治療Chapter 3-3治療計画を決定する要素92

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