成人矯正歯科治療
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57成人矯正歯科治療の可能性と限界5療方針の樹立が必要である3.■成長発育完了後の成人患者 抜歯,外科的手術,矯正歯科治療で減少した骨量の回復や断絶されたバイオロジックスプリントの回復などにも長期間を要し,加齢変化による歯周疾患,歯槽骨の吸収も伴ってくる.そのために元の状態に回復しないうちに,骨が吸収された状態でバイオロジックスプリントは新しいバランスを求めて収縮する. つまりバイオロジックスプリントは歯の移動因子となるが,同時に骨量を左右する因子としての作用をする.そのため骨の修復は制約され,骨の吸収量の多い場合は,歯肉の退縮やブラックトライアングルなどのインナービューティの老化につながっていく3‐5.■成長発育完了後の矯正歯科治療はどうすべきか 成人の矯正歯科治療では,永久歯が萌出してからの日常の生活における咀嚼・嚥下の習慣もすでに決まっているのがほとんどである.日常の口腔を中心とした生活にアウタービューティ(外面からの審美性)以外で機能的に不具合を感じていないことが多く,機能的にバランスがとれている患者が多い. 生物的には加齢がはじまっているか,すでに進行中である.そして個体としての機能的適応範囲は狭くなってきている.そのような生物学的背景のなかで,矯正歯科治療が行われるので,患者の内面的アンチエイジング(インナービューティ)をベースにしての外面的アンチエイジング(アウタービューティ)の達成を目的とした診断・治療目標と治療方法の私の回答■現在,成長発育中ならば成長により,矯正歯科治療で失われた骨の修復以上が期待できると考えられている.■成長発育完了後では,抜歯矯正で確かにその傾向はあると思えるが,矯正歯科治療により明確にどの程度の骨が減少するかの研究そのものがこれからであり,結果がでていないので,エビデンスはまだないと回答した.患者さんの両親(複数)からの質問■娘さん,息子さんが20年以上前に矯正専門医で上下顎小臼歯4本の抜歯で一人は2年半,もう一人は3年間矯正歯科治療を受けた.歯列はきれいになったが,35~40歳になって3次元CTで診たら,骨量が普通の人の半分に減少していた.これは抜歯による矯正歯科治療の影響ではないか? 28本が正常とすると24本では歯槽骨量がその85.71%となるが,矯正歯科治療でさらに減少するのでは? という質問であった.

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