必携!矯正装置
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49PART 2拡大装置PART 1Chapter6 クワドヘリックス(1) 第一の治療目標は上顎第一大臼歯の近心舌側回転(捻転)を改善することである.(2) つぎの治療目標が上顎歯列弓の側方拡大と前方拡大である.(3) 上顎第一大臼歯の近心舌側回転(捻転)を改善しないで,上顎歯列弓を側方拡大するのは不正咬合を増悪させることである.(4) 近心舌側回転(捻転)の改善や拡大に伴い,上顎第一大臼歯が遠心傾斜し,上顎第二大臼歯の萌出が遅延する.(5) この上顎第二大臼歯の萌出遅延は本格的矯正治療の開始時期を遅らせる.(6) 回転(捻転)の改善や拡大に伴い,上顎第一大臼歯が頬側回転し,舌側咬頭が挺出することがある.(7) この上顎第一大臼歯舌側咬頭の挺出は下顎を後下方に回転させるので,ハイアングルケースでは注意する.(8) 本調整法では上顎第一大臼歯の挺出を避けることが可能である.(9) 片側性交叉咬合では,可及的に非交叉咬合側で咀嚼するように指示する.Ⅲ. 最大の治療効果を得る勘所columnクワドヘリックス クワドヘリックス(quad-helix)はRickettsが改変し普及させた拡大装置である.クワドヘリックスの原型はダブルアーチ(W arch,図a)である.歴史的には,ダブルアーチの柔軟性を増すため,後方部分に2つのラセン体(helicoid)を組み込み,バイへリックス(bi-helix,図b)とした.さらに,このバイへリックスの前方部分に2つのラセン体(helicoid)を組み込み,クワドヘリックス(図c)の原型とした.すなわち,クワドヘリックスはダブルアーチに4つのラセン体が組み込まれただけである.しかし,これら4つのラセン体の組み込みは,持続的な弱い矯正力を発揮し,大臼歯捻転の改善および調整部位の特定化をもたらした. クワドヘリックスでは第一大臼歯の頬側傾斜や舌側傾斜,遠心傾斜を引き起こす.さらに,第一大臼歯の遠心傾斜は第二大臼歯の遠心傾斜と萌出遅延を誘導し,マルチブラケット装置を用いた本格的矯正治療の開始時期を遅らせる.この所見は第一大臼歯を遠心傾斜・遠心移動させる矯正装置(ヘッドギア,ペンデュラム装置)に共通である.クワドヘリックスを用いた上顎歯列弓の側方拡大は同時に下顎歯列弓の幅径も拡大し,ディスクレパンシーを若干解消する.図a:ダブルアーチ.b:バイへリックス.c:クワドヘリックス.abc

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