周術期口腔機能管理の基本がわかる本
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104大学病院でのシステム例①長崎大学病院大学病院でのシステム例②東邦大学医療センター大森病院一般病院でのシステム例市立池田病院歯科の併設がない病院の場合の例長崎県歯科医師会 (開業歯科医院による対応)大学病院における取り組みの現状大学病院でのシステム例②東邦大学医療センター大森病院一般病院でのシステム例市立池田病院歯科の併設がない病院の場合の例長崎県歯科医師会 (開業歯科医院による対応)大学病院における取り組みの現状 長崎大学歯学部では2011年5月に「口腔ケアワーキング」を開き,医科疾患患者の口腔管理に関する議論と口腔ケアセンター設立の準備を開始した. 2011年10月には兼任歯科医師2名(口腔外科および予防歯科)および兼任歯科衛生士2名により,頭頸部がん放射線治療患者の口腔管理を開始した.2012年5月には歯学部各診療科より20数名の歯科医師の協力を得て口腔ケアチームを編成し,本格的に医科疾患患者に対する周術期口腔機能管理を開始することとなった.さらに2013年6月からは周術期口腔管理センターを正式に設置している. 当センターでは,それぞれの協力歯科医に週に半日~1日業務を担当してもらい,毎日午前中2名,午後4名の歯科医師数を確保した.午後の歯科医師数が多いのは,病棟やICUへの往診を午後に行っているからである.歯科衛生士は3名を専任配置し,終日センターの業務に従事させることとした.2013年4月には病院の助教再配置により,新たに専任助教2名を当センターに配属でき,さらに充実した口腔管理を行えるような体制をとった. 周術期口腔機能管理を開始するにあたって,対象患者を当センターに誘導する方法についてさまざまな議論を行った.医科診療科で加療中の患者が何らかの口腔内症状を有する場合は主治医から歯科宛の紹介状を作成するのが一般的であるが,今回の周術期口腔機能管理はとくに口腔内症状や歯科病名はなく医科疾患に対する予防的処置であることや,疾患別に一定の依頼基準を設けることが可能であることなどから,筆者らは医科主治医からの個別の紹介状は不要とするシステムを構築することとした(表1).すなわち,疾患別に病院全体,あるいは各診療科から「包括的依頼」をもらい,それに従って口腔管理を開始することをコンセプトとしている.たとえば,全身麻酔下でがん手術を受ける患者は術前から口腔管理を行うということを病院全体の方針と定め,個々の患者において主治医からの依頼状がなくても周術期口腔管理センターが介入し,患者の同意が得られたら口腔管理を開始することにした.実際に当センターでは表2に示したような疾患患者に口腔管理を行っているが,以下にそれぞれの疾患について,具体的な患者紹介方法について記す.1.周術期口腔管理センターの設立2梅田正博1)2)1)長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 展開医療科学講座 口腔腫瘍治療学分野 2)長崎大学病院 周術期口腔管理センター大学病院でのシステム例①長崎大学病院 ~包括的依頼に基づいた全例介入システム~疾患名紹介方法 全身麻酔下のがん・心臓・臓器移植手術患者 包括的依頼 頭頸部がん放射線治療患者 包括的依頼 ICUにおける人工呼吸器装着患者 包括的依頼 一般病棟における人工呼吸器装着患者 包括的依頼 救急救命センター入院患者 包括的依頼 化学療法患者(造血器腫瘍など) 主治医からの依頼状 その他(BP製剤投与患者,免疫抑制状態患者, など) 主治医からの依頼状 医師からの依頼状を必須にすると口腔 管理が必要な患者の多くに口腔管理を 施行できない ↓ 病院あるいは診療科から包括的依頼を もらう ↓ 個々の患者に同意を求める ↓ 主治医に口腔管理を開始することを伝 える 必要なら診療情報を歯科側から求める表1 包括的依頼に基づいた口腔管理表2 周術期口腔管理センターで取り扱う患者と紹介方法

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