周術期口腔機能管理の基本がわかる本
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46がん手術と口腔管理心臓手術と口腔管理人工呼吸器関連肺炎(V A P)と口腔管理頭頸部がん放射線治療と口腔管理がん化学療法と口腔管理臓器移植手術と口腔管理頭頸部がん術後S S Iと口腔管理がん手術と口腔管理人工呼吸器関連肺炎(V A P)と口腔管理頭頸部がん放射線治療と口腔管理がん化学療法と口腔管理臓器移植手術と口腔管理頭頸部がん術後S S Iと口腔管理 心臓手術が決定すると患者はメディカルサポートセンター(MSC)で入院予約を行う.その際に対象患者全例に対して看護師より心臓手術における口腔管理の重要性について説明を行い,原則的に全例周術期口腔管理センター紹介となる.周術期口腔管理センターの歯科医師は初診時に口腔内診査,パノラマエックス線撮影,歯周病検査などを行い,感染源になりうる歯を抽出する.当センターでの抽出基準(表4)は,Yamagataらの造血幹細胞移植に際する歯科的マネジメントに関する論文9を参考にしたものを用いている.この基準に該当する歯は基本的に抜歯を行うこととしている.その後,TBIやスケーリング,PMTCなどを行い,入院に備える. これまで歯科医師は,「歯をできるだけ保存する 心臓手術の多くは計画手術であり,手術が計画されてから実施されるまでに比較的時間的余裕があるため,手術までの期間に患者教育も含めた十分な口腔管理を行うことができる.現在,がん患者の周術期口腔機能管理について各地域で講習会などが開催され全国的な広がりをみせるなかで,心臓手術患者についても歯科診療所への口腔管理依頼が増えていくものと思われる.しかし,心臓手術予定患者については,術前抜歯の適応基準など未解決のことも多く,前述のように抗血栓療法に対する配慮など,がん患者に対する周術期口腔機能管理とは若干異なった対応が必要となる.以下に,長崎大学病院周術期口腔管理センターならびに心臓血管外科合同で行っている心臓手術に際する口腔管理の取り組みを紹介する.4.心臓手術患者に対する口腔管理の実際ことが使命である」と考えてきた.しかし心臓手術患者については,「致死的疾患の原因になる歯は安全に処置ができる間に対処する」という方向に考え方を変える必要がある(図5).実際,心臓手術の前,とくに初回の弁疾患手術前は抗凝固療法が施されていないこともあり,比較的安全に抜歯が施行できることも多い.また,冠動脈疾患においては,冠動脈狭窄病変や狭窄部の血管内壁プラークに歯周病原菌がみつかることも明らかとされており,CABGで開通した血管が再度狭窄することを防ぐためにも積極的に感染源を除去する必要がある.また,CABG後には抗血小板療法が施行されるため先立って処置を行うことが望まれる.5に根尖病巣を認めるが自覚症状はない.このような歯は心臓手術前に抜歯しておくことが望ましい.図5 心臓手術前に抜歯するほうが望ましい歯 表4 心臓手術前の抜歯基準①歯肉腫脹,疼痛,発赤,排膿など感染症状のある歯②8mm以上の歯周ポケットのある歯③エックス線で5mm以上の根尖病巣を認める歯④智歯周囲炎の既往のある智歯1.入院前

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