必ず習得しておきたい歯科医院のための救命救急処置
7/8

86イザというとき慌てない!必ず習得しておきたい歯科医院のための救命救急処置虚血性心疾患1)虚血性心疾患とは何か? 虚血性心疾患は,冠動脈の狭窄や収縮(攣縮)によって血流が遮られ,心筋細胞に十分な酸素と栄養が供給されなくなることで発症する病態である.狭心症や心筋梗塞などがこれに含まれる.狭心症の場合,血液の供給不足は一時的で心筋のダメージも可逆的である.症状は数分~十数分で治まる.表2高血圧症患者の歯科治療*1血圧コントロールが良好な高血圧症患者には,アドレナリンは40μgまで使用できる2(1/80,000アドレナリンを含有するカートリッジ1.8ml中のアドレナリン量は22.5μg).*2フェリプレシンは0.18単位まで使用できる2(歯科用シタネスト‐オクタプレシン®カートリッジ1本は0.054単位のフェリプレシンを含有する).*3β遮断薬服用者に使えるアドレナリンは20μgまでである2.歯科治療を行うには血圧がきちんとコントロールされていることが不可欠である.収縮期血圧≧180mmHgまたは拡張期血圧≧110mmHgでは歯科治療を行うべきではない.するべきこと注意点と対処法治療前日まで◦血圧測定➡収縮期血圧≧180mmHgまたは拡張期血圧≧110mmHgならば歯科治療の前に血圧コントロールが必要.◦血圧コントロール➡内科または循環器内科へのコンサルテーション.◦降圧薬の確認◦ 臓器障害の有無の確認治療前(当日)◦降圧薬の服用➡治療当日の朝も降圧薬を服用するように指示する.◦血圧測定➡収縮期血圧≧180mmHgまたは拡張期血圧≧110mmHgならば治療中止.◦不安・緊張の緩和➡強い不安や緊張により血圧が上昇することがある.➡精神安定薬の投与や精神鎮静法を考慮する.治療中◦局所麻酔への配慮➡痛みによる血圧の上昇を避けるため,確実な麻酔効果を得ることが必要.◦ 局所麻酔薬に含まれる血管収縮薬への配慮➡血管収縮薬による血圧の変動に注意する.・アドレナリンを含有するカートリッジ(1.8ml)を2本以上使用するときはアドレナリンを希釈する*1.・フェリプレシンを含有するカートリッジ(1.8ml)は3本まで使用できる*2.・β遮断薬を服用している患者では,アドレナリンによる異常な血圧上昇が起こりうるので希釈して使用する*3.◦血圧測定➡局所麻酔後や痛み刺激時の血圧確認.◦治療時間の短縮➡長い治療時間による血圧上昇を避ける.◦ 治療中の異常高血圧に対処する➡ニフェジピン10~20mgの内服.※ニトログリセリン舌下スプレー1回1噴霧または硝酸イソソルビドスプレーを口腔内に1噴霧:血圧低下の効果はあるが,高血圧は薬剤の適応とはなっていないことに留意.➡症状が改善しない場合は,内科または循環器内科に連絡する.治療後◦血圧測定➡血圧上昇または過度な血圧低下がないか確認する.◦疼痛管理➡痛みによる血圧の上昇を避けるため,治療内容に応じた十分な鎮痛薬を処方する.

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です